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プロフィール

Author:新板橋クリニック
平成18年4月1日東京都板橋区、都営地下鉄三田線新板橋駅より徒歩1分に、清水公一を院長として、新板橋クリニックを開設いたしました。
消化器・胃腸科、外科を中心に、一般内科、肛門科を診療いたします。生活習慣病(糖尿病、高血圧、高脂血症など)の診療を行い、身近なかかりつけ医(ホームドクター)として、また予防医学にも力を入れ、温かくわかり易い診療で近隣の皆さん方のお役に立てるように努力して参りたいと思っております。
がん治療(早期発見・診断、手術、化学療法、緩和医療)に長く従事していたことから、がん集学的治療を行う腫瘍センター(オンコロジーセンター)を併設いたしました。
また人間ドック、消化器がん専門ドックなどにも力をいれております。
検査設備としては、上部内視鏡検査(咽頭・喉頭・食道・胃・十二指腸)及び下部内視鏡検査(大腸)(いわゆる胃カメラ・大腸カメラ)、レントゲン透視、超音波検査(エコー検査)、心電図等充実させております。
院長や医師の豊富な経験をもとに、近年ご要望の多いセカンドオピニオン等のがん医療相談も予約制で行っておりますのでご相談ください。

医療理念

医者と患者という人間同士が、健康・病気を相談しながら共同で診ていくことを目指します。人を思いやり、安心と満足をもたらし、心身共に幸せにできる医療を目指して行きたいと思っています。

新板橋クリニック

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新板橋クリニックのお知らせ
新板橋クリニックからのお知らせブログ、診療案内や、病気のお話など
SUTENT®(SUNITINIB MALATE)の使用にあたって
SUTENT®(SUNITINIB MALATE)の使用にあたって

新板橋クリニック

SUTENT®(SUNITINIB MALATE)の使用にあたって
Version 2012.01
1. 概説

Sutent®は、腫瘍細胞が活発に増殖するのに必要な「増殖信号」が、細胞の外部から内部に伝わらないようにする薬剤です。腫瘍細胞の表面には、増殖信号を受け取る「受容体」と呼ばれる受け皿があり、増殖信号が受容体に入ると、受容体から細胞の内部まで増殖信号が伝わっていきます。受容体から細胞内部まで増殖信号が伝わる時には、チロシンキナーゼ(tyrosine kinase)と呼ばれる物質が必要であり、Sutent®はチロシンキナーゼの働きを邪魔することで、増殖信号が細胞の内部まで伝わらないようにします。

Sutent®は、「細胞増殖」・「血管新生」・「腫瘍細胞の浸潤・転移」に関わる受容体のチロシンキナーゼを邪魔する(阻害する)薬剤です。Sutent®で阻害される受容体は、PDGFR-α、PDGFR-β、VEGFR1、VEGFR2、VEGFR3、KIT、FLT3、CSF-1R、RETです。

2. 血液中の動態

Sutent®はカプセル状の経口薬です。服薬すると血中濃度が最高に達するのは、6時間から12時間後になります。血液中では、主として(90%以上)アルブミンと結合しており、肝臓のcytochrome P450 (CYP3A4)で分解・代謝されます。Sutent®の代謝産物の約60%は糞便中から排出され、約20%が尿中から排出されます。Sutent®を服薬すると、半減期は40から60時間、Sutent®の活性がある代謝産物の半減期は、80から110時間です。連日服用を継続すると、約10日から14日で血中濃度は一定に達します。

腎機能低下あるいは肝機能低下のある患者では、Sutent®の代謝がどの程度影響を受けるかどうかのデータは今のところありません。

CYP3A4の働きを抑制する薬剤(CYP3A4 Inhibitors)と一緒にSutent®を投与する時は、Sutent®の血中濃度が上昇する可能性があるため、薬剤を減量あるいは、投与期間を短縮する必要があります。一方、CYP3A4の働きを亢進させる薬剤(CYP3A4 Inducers)と一緒にSutent®を投与する時は、Sutent®の血中濃度が減少する可能性があるため、薬剤の増量あるいは投与期間を延長する必要があります。
3. 治療効果

POINT
●奏功率は10%程度しか認められていません。
●無増悪生存期間や全生存期間の延長が認められています。

(1) Study A (多施設共同無作為化比較試験)
Imatinib mesylate (Gleevec)に耐性となり腫瘍が増殖しているGISTの患者を対象に、Sutent®を投与する臨床試験が行われました。Imatinib耐性となったGISTの患者で、Sutent®の投与を受けた患者と、プラセボの投与を受けた患者で治療効果に差が生じるかどうかが検討されました。Sutent®は、50 mgのカプセルを1日1回1カプセル服用、4週間連日服用し2週間休薬するスケジュールでした。
Imatinib耐性の312例の患者のうち、207例の患者がSutent®を服用し、105例の患者様がプラセボを服用しました。

治療を開始して腫瘍増殖が確認されるまでの期間(TTP)は、Sutent®を服用した患者では、27.3週(6.3ヶ月)、プラセボを服用した患者では6.4週(1.5ヶ月)となり、腫瘍増殖が起こるまでの期間を4倍以上延長させることがわかりました(Hazard ratio=0.33, p<0.001)。プラセボ群は腫瘍が増加した時点でSUTENT(スーテント)を投与されましたが、SUTENT群は有意に生存期間が延長しました。

(2) Study B (single-arm, open-label, multicenter studies)
Imatinib耐性となり腫瘍が増殖しているGISTの患者を対象に、Sutent®を投与して腫瘍縮小が得られるかどうかが検討されました。55例のImatinib耐性のGIST患者が、50 mgのカプセルを1日1回1カプセル服用、4週間連日服用し2週間休薬するスケジュールでした。腫瘍縮小が得られた患者は55例中5例で9.1%でした。

(3)??
Imatinib mesylate (Gleevec)に耐性となり腫瘍が増殖しているGISTの患者を対象に、Sutent®を投与する臨床試験が行われました。Imatinib耐性となったGISTの患者で、Sutent®の投与を受けた患者と、プラセボの投与を受けた患者で治療効果に差が生じるかどうかが検討されました。Sutent®は、50 mgのカプセルを1日1回1カプセル服用、4週間連日服用し2週間休薬するスケジュールでした。
Imatinib耐性の243例の患者がSUTENTを服用し、104例の患者様がプラセボを服用しました。

全生存期間の中央値(Median OS)は、Sutent®を服用した患者では、73.9週、プラセボを服用した患者では35.7週となりました。


腫瘍のKIT遺伝子型による効果の違い(kinase genotypes of GIST)

POINT
●exon 9の方がexon 11の変異と比較して、SUTENT(スーテント)の腫瘍制御効果(CR+PR+SD)や奏功率、無増悪生存期間、全生存期間が良好である
●野生型ではexon 9変異と同等の効果がある

解説

(1) JCO 26: 5352, Heinrich et al
SUTENT(スーテント)のphase I/II試験に登録された97例を対象に、遺伝子型による効果の違いが検討されました。exon 9変異の方がexon 11の変異と比較して、SUTENT(スーテント)の腫瘍制御効果(6か月以上続くCR+PR+SD)や奏功率は良好でした。Exon 9変異では腫瘍制御効果と奏功率は58%と37%、exon 11変異では34%と5%でした。無増悪生存期間、全生存期間の中央値は、exon 9で19.4か月、26.9か月、exon 11では5.1か月と12.3か月でした。野生型では、腫瘍制御効果は、56%、無増悪生存期間の中央値は19.0か月、全生存期間の中央値は30.5か月でexon 9変異と有意な差は認めなかった。

更なる臨床試験の結果をまつ必要がありますが、SUTENTはGleevecと違いexon 9変異のGISTの方が効果の高い傾向にあることが示唆されています。
4. 副作用

(1) 左心不全

Sutent®を服用した3%から15%の患者で、左心室不全が起こっています。一部の患者では、Sutent®の服用を中止した後、左心不全は回復しています。12ヶ月以内に狭心症や心筋梗塞の既往がある方、冠動脈バイパス手術(CABG)を受けた方、慢性心不全のある方は、Sutent®の服用は慎重にするべきです。服用前と服用中は定期的に心電図、胸部レントゲン検査、心エコー検査を施行する必要があります。

(2) 出血傾向
Sutent®を服用した18から26%の患者でなんらかの出血が起こっています。しかし、同時期にプラセボを服用した患者でも17%程度に出血がおこっているため、どの程度出血の危険が上昇するかは、正確にはわかりません。上部(胃・十二指腸)や下部消化管(直腸・結腸)の出血や創部からの出血に注意する必要があります。潰瘍の既往がある方や歯科治療、外傷などでは出血に注意します。腫瘍からの出血が報告されており、特に肺転移がある方では、腫瘍からの出血のため血痰・喀血を起こし致命的となる場合も考えられます。肺転移のある方では投与を慎重にする必要があります。

(3) 高血圧・浮腫・体重増加・蛋白尿
Sutent®を服用した15%から28%の患者で、高血圧が報告されています。また、水分貯留による下肢の浮腫が顕著となります。浮腫・体重増加、高血圧の3徴候が明らかとなり、降圧療法が不十分あるいはSUTENTの直接作用でタンパク尿が悪化します。タンパク尿が悪化すると、血液中のアルブミン値の低下を招き、ますます、浮腫が悪化、胸水・腹水の増加、心不全・肺水腫を引き起こします。その際は、SUTENTの一旦中断が必要です。

(4) 副腎機能不全
副腎に対して組織障害性があることが報告されています。Sutent®を服用することで、副腎機能不全の明らかな臨床症状や、画像検査での副腎壊死や出血は認められていませんが、外科手術、外傷、感染症の際は、注意が必要です。

(5) 消化器症状
吐き気・嘔吐・胃痛・胃もたれ・胸焼け・腹痛・下痢・便秘などが報告されています。

(6) 皮膚症状
皮膚の脱色、毛髪の脱色が報告されています。また、皮膚の乾燥化、皮膚炎、発疹、かゆみ、ひび割れ、水泡化が手掌、上肢、下肢に出現します(手足症候群)。爪周囲炎や口角炎が報告されています。

(7) 粘膜障害
口内炎、舌炎、味覚障害が報告されています。

(8) 血栓症
下肢静脈血栓症、肺梗塞の報告があります。

(9) 甲状腺機能低下症
甲状腺ホルモンの低下、TSHの上昇が報告されています。3か月に1回は甲状腺ホルモン検査を実施し、ホルモンが低下してきたら、甲状腺ホルモン製剤を投与する必要があります。

(10) 一般的副作用
全身倦怠感
食欲不振
無気力感
浮腫
頭痛
関節痛
筋肉痛
腰痛
脱毛
が報告されています。

(11) 採血
肝機能障害(AST/ALTの上昇)
胆道系酵素(ALP,g-GTP, Bil)の上昇
すい臓酵素(AMY, Lip)の上昇
腎機能(Cre,電解質)の異常
骨髄抑制(白血球、血小板の減少)
貧血
が報告されています。
特に、50 mgで投与をしていると、10日から2週間を経過すると急激に血小板が減少してきます。かなり急激に低下するので、2週間に1回の診察ではなく、2週間以降は毎週診察して血液毒性をcheckする必要があります。

(12) 創傷治癒の遅延
VEGFは創傷治癒に関わることから、Sutent®の投与で創傷治癒が遅延する可能性があります。しかし詳細なデータは現在のところありません。

(13) たんぱく尿
高血圧・浮腫、体重増加と並行してたんぱく尿が顕著となります。降圧療法、利尿剤でまず、降圧をしっかり行い、たんぱく尿をコントロールします。血圧が上昇すると蛋白尿が悪化し、血液中アルブミン値の低下、浮腫や腹水・胸水の貯留、体重増加をおこしますので、その際は、SUTENTの一旦中断が必要となります。

詳細は
新板橋クリニック

テーマ:ガン治療 - ジャンル:ヘルス・ダイエット

GISTの薬物療法
新板橋クリニック

GISTの薬物療法
Version 2012.01

POINT

● Gleevec(グリベック)が第一選択である。
● 2次治療はSUTENT(スーテント)が有効である。
● 3次治療は確立していない。
● 3次治療では、GleevecとSUTENTの併用も考慮される
● リスクの高い場合は、完全切除後にGleevecの術後投与が推奨される

A術後imatinib投与

POINT

 KIT陽性であることを確認します
 KIT変異がexonのどの部位であるかを確認します
 腫瘍経が6 cm以上であれば術後補助治療が推奨されます。
 腫瘍径が3~6 cmでも、腫瘍細胞の分裂数が多い場合は、術後補助治療が推奨されます。
 高リスク例あるいはclinically malignant症例では、gleevecの投与が推奨される。可能な限り投与を継続する(最低3年間以上)ことが推奨されます。
 gleevecの投与が3年間以上継続できるように副作用のコントロールが必要です
 副作用がコントロールされていれば、gleevecの投与は3年を超えても、中止しないで継続することが望ましい。
 1日400mgの量にこだわらず、副作用がマネージできる投与量で治療を継続する。

(1) Z9001: Lancet 2009; 373: 1097
Imatinibの投与が、GIST術後の補助治療として有効であることが報告されました。3 cm以上の腫瘍径であった713人の患者が、術後84日以内に毎日400mgのイマチニブあるいはプラセボの投薬が開始され、術後1年間服用しました。
試験の結果、イマチニブを服用した群(359例)では、30例(8.4%)が再発したのに対して、プラセボを服用した群(354例)では70例(19.8%)が再発しました。術後1年後の無再発生存率はイマチニブ群で98%、プラセボ群で83%でした(Hazard ratio=0.35, p<0.0001)。本試験は中間解析で有効中止となったため、死亡例はイマチニブ群5例、プラセボ群8例で全生存率は有意差を認めませんでした。また、切除した腫瘍の大きさに分けて解析したところ、腫瘍サイズが3 cm以上では両群間の無再発生存期間の差に有意差が生じました。3 cm以上6 cm以下ではHR=0.23, p=0.011、6 cm以上10 cm以下ではHR=0.50, p=0.041、特に10 cm以上ではp<0.0001でした。

Exonの変異部位での解析では、KITの野生型では、術後Imatinib投与は必要ないと考えられます。Exon11の変異がある場合は、Imatinibの術後投与で、2年無再発生存期間が無治療と比較すると優位に改善します。Exon9の変異では、明確な再発抑制は不明です。

上記の報告から、術後には、副作用がマネージメントできていれば、Imatinib 400 mg/日で、最低1年間の補助化学療法を行なうことが推奨されます。

コメント

Z9001のデータでの問題点は、1年間のgleevec投与終了後、GIST再発をきたす患者が増加することです。つまり、gleevecの投与は1年では足りないことが示唆されます。また、gleevecの1年間投与を行っても、ミクロレベルで残存しているGIST腫瘍細胞は、死滅するのではなく制御されていることがわかります。同じことが再発GISTの治療で報告されています。再発例では、gleevecの投与を行い効果を示した症例に投与を中断すると、急速に増悪することから、gleevecは投与を中断してはいけないことが報告されています。
上記のことから、ミクロレベルで遺残しているGISTに対して、gleevecの補助治療を行う際は、gleevecの投与で腫瘍細胞の死滅を図ることは難しく、制御することを目的に投与を継続する必要が推測されます。

現在、術後補助治療を何年程度行うべきかを検討する臨床試験が進行中であり、その結果が待たれます。また、全生存期間をエンドポイントにして臨床試験によって、イマチニブの術後補助治療で、無再発生存期間のみでなく、全生存期間の延長が得られるかどうかが明らかになります。

今のところ、gleevecの投与は中止しないで、継続することが推奨されます。また、1日400mgの投与量にこだわらず、副作用がマネージできる範囲で投与量を決定し(1日100 mgから400 mg)継続することが必要です。

(2) SSGVXVIII/AIO:ASCO 2011

GISTを切除後に、どれぐらいの期間Imatinibの投与を継続するべきかを調べる臨床試験の結果が報告されました。1年間の投与と3年間の投与を比較しました。

Highリスクに分類されるGISTを対象に臨床試験が施行されました。Highリスクの定義は、腫瘍径10cm以上、分裂像が10/50HPF、腫瘍径が5cmから10cm未満でかつ分裂像が5/50HPF、腫瘍破裂例でした。

1日400mgの投与が行われ、主要評価項目は無再発生存期間、副次的評価項目は全生存期間と安全性でした。

平均経過観察期間が54ヶ月で、1年投与群(199例)と3年投与群(198例)を比較すると、3年無再発率は、それぞれ60.1%と86.6%でした。5年無再発率は、47.9%と65.6%でした。有意差をもって3年投与群で無再発生存期間は延長していました(HR=0.46,p<0.0001)。

一方、全生存期間は、1年投与群と3年投与群を比較すると、3年生存率は、94%と96.3%で、5年生存率は、81.7%と92%でした。有意差を持って3年投与群で全生存期間は延長していました(HR=0.45、p=0.019)。

1年間のImatinibの投与を中止すると、再発が増加し、生存率が低下することが改めて確認されました。

サブセット解析では、Exon11の変異では、3年投与群は1年投与群と比較して有意に無再発生存を改善しましたが、Exon9の変異では、有意差はありませんでした。

上記の報告から、術後には、副作用がマネージメントできていれば、Imatinib 400 mg/日で、最低3年間の補助化学療法を行なうことが推奨されることがわかりました。


B手術不能あるいは転移・再発GISTの治療
 Gleevec(グリベック)が第一選択である。
 2次治療はSUTENT(スーテント)が有効である。
 3次治療は確立していない。
 3次治療では、GleevecとSUTENTの併用療法も考慮される。
 副作用で投与の継続ができなくならないようにする工夫が必要

B-1 Gleevec(グリベック)
POINT

● Gleevec(グリベック)の投与が第一選択です
● 腫瘍制御効果は約80%以上です。
● SDとPRは同等の予後です。
● 無増悪生存期間の中央値は20-24ヶ月です。
● 効果がある限りは投与を続ける必要がある(投与を中止してはいけない)。
● exon 11変異はexon 9や他の変異、野生型と比較して生存期間が延長している
● exon 9変異ではgleevecの増量で効果を期待できる。Exon 11変異ではgleevecの増量であまり効果を期待できない。


解説
GISTに対するイマチニブの効果については、国内、海外で試験が実施されてきました。国内の臨床試験では、切除不能または転移性のGIST患者さんにイマチニブを1日1回400mg投与したところ、治療開始6ヵ月後において、腫瘍の消失(完全寛解:CR)は得られせんでしたが、腫瘍が50%以上縮小したPR と、腫瘍の大きさが変化しなかったSDを加えた「病勢コントロール」は、100%に達しました。
海外の報告では、グリベックの効果は進行停止(不変)を含めると80%以上となり、非常に有効な治療法です。腫瘍が縮小あるいは安定状態になった患者では、病気が進行した場合に比べて、死亡率が90%以上減少することが解っています。

グリベックはどのようにして効果がでるのか?
GISTの発症メカニズムは、KIT蛋白という細胞増殖にかかわる細胞膜上の蛋白が、異常な増殖シグナルを伝達し続けるために起こることがわかっています。イマチニブは、細胞膜上の異常なKIT蛋白に結合して、増殖シグナルを阻害する分子標的治療薬です。また、PDGFRα (アルファ)という蛋白の異常も、まれにGISTの原因となることがありますが、イマチニブはこの蛋白の異常に対しても、ある程度効果があることがわかっています。その一方で、KITやPDGFRα に変異を持たないGISTには、イマチニブが効きにくいこともわかってきました。

分子標的治療薬の治療効果の判定

POINT

● 治療前にCT検査及びPET検査を施行します。

● CTで腫瘍径が縮小してきた場合(内部が低濃度・液状・嚢胞化)は効果ありと判定します。

● CTでは、腫瘍の大きさがさほど変化しなくても、内部が液状・のう胞化してくる場合、効果ありと判断します。

● PETでは、集積が消失あるいは集積が低下した場合効果ありと判断します。

● Gleevec治療中に耐性が出現した場合は、治療によって縮小した病変の腫瘍径が、再び大きくなる場合(全体の6割から7割程度)、低濃度で描出される腫瘍の内部に結節陰影が出現してくる場合(nodule in a mass)場合が認められます。どちらの場合でも、PET-CTでは、該当する病変で、集積が出現・増加する場合と、集積が認められない・わずかである場合があります。つまり、PET-CTの所見とCTでの画像所見が乖離してくることがあります。

解説
治療反応例では、Gleevec(グリベック)治療を開始してから24時間程度でPET検査で集積の低下を認めるようになります。つまり治療に反応しているかどうかをCT検査より早くPET検査で知ることが可能であると報告されています。そこで、PET検査は治療を開始してから2週間から1か月後程度に撮影し、その後は3か月に1回程度の撮影を行います。

Gleevec(グリベック)の治療効果は、CT検査では投与を開始してから約3カ月~6カ月で現れ始める患者さんが多いようです。そのため、CT検査は、治療中3か月に1回程度の撮影が推奨されています。

CT検査では、治療反応例においても、治療早期では腫瘍の大きさが増大することがあります。しかし、腫瘍の大きさが増大しても、しだいに内部は低吸収域となり液状の変化を起こしてきます。腫瘍の液状化とは、CTによる所見が黒く抜ける状態で観察されます。液状変化をおこした腫瘍は、大きさが変化しなくなるか、ゆっくりと大きさが縮小してきます。

GISTの場合、必ずしも腫瘍が縮小していなくても、大きさが不変(SD不変 : stable disease)であれば「病気の進行をコントロールできた」と判断され、そこは他の癌とは大きく異なる点です。実際に海外の臨床試験でも、SD患者の方の生命予後は、CR(完全寛解)またはPR(部分寛解)患者とほぼ同等であることが示されています。

Gleevec(グリベック)を使った標的治療

POINT

● Gleevecが第一選択です。
● 1日400 mgが標準量です
● 副作用で服用が継続困難にならないことが重要です。
● 副作用に応じて服用量は調整する必要がある。

解説
グリベック(Gleevec)の標準量は1日400 mgですが、皮膚症状や下痢、血液毒性などの副作用が見られる場合は、減量を考慮します。副作用のために、服薬が困難とならないように注意します。

服用を開始して、2週間から1ヶ月程度で効果判定が可能です。
① CTでは、腫瘍の大きさはさほど変化しませんが、内部が液状・のう胞化してくる場合、効果ありと判断します。
② PETでは、集積が消失あるいは集積が低下した場合効果ありと判断します。

効果ありと判断された場合、グリベック(Gleevec)の服用を継続します。

Gleevec(グリベック)の副作用

POINT

● 皮膚症状、下痢、血液毒性、浮腫がよくみられる副作用です
● 重篤にいたる副作用に注意をします
● よくみられる副作用をマネージメントする必要がある。グリベックの減量、一時休薬、対症療法などが行われます。

解説
標準量を服用すると、手指の皮膚の乾燥化など手・足症候群(HFS)類似の症状、食欲不振、吐き気・嘔吐、下痢、浮腫、血液毒性(白血球減少、血小板減少、貧血)がしばしば出現します。また、カルシウムや鉄の吸収障害がおこり、鉄欠乏性貧血や低カルシウム血症による痙攣などが時々認められます。発症すると重篤な副作用としては、心筋障害(心拍出量の低下、心不全)、血栓症、出血、間質性肺炎、肝機能障害が見受けられます。症状はありませんが、採血でアミラーゼの上昇を認めることがあります。
HFS類似の皮膚障害や下痢、浮腫や血液毒性が原因で、服用継続困難となる例が大部分です。上記の副作用が深刻になってきたら、すみやかにグリベックを減量あるいは休薬する必要があります。副作用が重い場合は、標準量の1日400 mgに固執しないで、減量して継続する(例えば1日300 mg)か、1日400 mgの服用である程度の期間服用(例えば2週間)したら、休薬期間を設ける(例えば1週間)工夫も必要です。

Gleevec(グリベック)で効果がみられなくなったら

POINT

● 投与初期から効果がない場合は、SUTENT(スーテント)へ変更します
● ある程度の期間効果があった後、効果が認められなくなった場合は、Gleevec(グリベック)の増量をおこなう
● exon 9変異ではgleevecの増量で効果を期待できる。Exon 11変異ではgleevecの増量であまり効果を期待できない。
● Gleevec(グリベック)の増量で効果がなければSUTENT(スーテント)への変更が考慮されます。


解説
Gleevec(グリベック)の投与初期から効果がなかった場合(そのような例はほとんどない)は、初期耐性(intrinsic resistance)と呼ばれます。初期耐性は、KIT陰性である特殊なGISTで見られると考えられます。あるいは、初期耐性が認められた場合は、病理組織検査を再度施行し、GISTの診断に誤りがないかの確認が必要です。KIT陰性GISTであった場合は、KIT蛋白に変異がないのでGleevec(グリベック)は理論上効果がないと考えられるので、SUTENT(スーテント)に変更することが推奨されます。

ある程度の期間効果があった後、腫瘍の再増殖が見られた場合は、後期耐性(acquired resistance)と呼ばれます。後期耐性は、グリベック治療後に発生する耐性で、1.5年の治療で、約半数の症例に耐性が生じることが報告されています。後期耐性では、グリベック(Gleevec)を最大1日600mgまで増量することが推奨されます。増量で効果が見られた場合は、服用を継続します。効果がみられず腫瘍が増殖する場合は、Sutent(スーテント)に変更します。

Imatinibの投与量

POINT

● 2つの第III相臨床試験では、初期投与量は、標準量(1日400 mg)と高用量(1日600-800 mg)を比較して生存期間の延長が認められませんでした。

● メタ解析では、わずかに1日400mgと比較して800mgで無増悪生存期間が有意に延長しましたが、全生存期間に有意差はありませんでした。1日800mgでの無増悪生存期間の有意な延長は、exon9変異の患者で認められました。

● 腫瘍が増殖した場合は、副作用に注意しながら増量を行うことが推奨されます。

● exon 11変異はexon 9や他の変異、野生型と比較して生存期間が延長している
● exon 9変異ではgleevecの増量で効果を期待できる。Exon 11変異ではgleevecの増量であまり効果を期待できない。

解説
(1) European Study: EORTC study 62005
手術不能進行GIST 946例を対象とした第III相臨床試験で、Gleevec1日400 mgと1日800 mgで治療効果に違いがあるかどうかが報告されました。400 mgと800 mgでは、奏功率は50%と54%、1年生存率は85%と86%、2年生存率は69%と74%となり有意な違いは認められませんでした。一方、無増悪生存期間の中央値は、800 mgは2.02年、400 mgは1.74年と800mgで延長する傾向であったが有意差はなかった(HR= 0.89、p=0.0560)。全生存期間の中央値は、800 mgは3.78年、400 mgは3.74年と800mgで有意差はなかった(HR= 0.95、p=0.5853)。サブセット解析では、800 mgのほうが後期耐性が少ないこと、exon 9の変異のあるGISTで効果が高いことが明らかとなった。しかし、800 mgでは副作用がより重く、投与の中断が多く認められた

(2) S0033試験
746例の進行GIST患者を対象としたS0033試験で、gleevec 1日400 mgと1日800 mgで治療効果に違いがあるかどうかが報告されました。400 mgでは、腫瘍増殖が認められた時点で、800 mgへの増量が行われました。
400 mgと800 mgでは、無増悪生存期間の中央値は、1.46年と1.64年で有意差はなく(HR= 0.89、p=0.1806)、全生存期間の中央値は4.59年と4.27年で両方の投与量で有意差はありませんでした(HR= 1.06)。
1日400 mgで腫瘍増殖が認められ1日800 mgに増量した患者の33 %で腫瘍増殖の停止あるいは縮小が認められました。

(3) メタ解析:JCO 28:1247-1253
1日400mgと800mgで効果を比較する2件の大規模無作為化第III相臨床試験(S0033と62005)のメタ解析が行われました。
主要評価項目は、無増悪生存期間(PFS) と全生存期間(OS)で、副次的評価項目として、年齢、性別、PS、原発巣、KITの変異などが治療効果との関連が検討されました。

2つの臨床試験を合わせて1640例の患者がメタ解析され、gleevec 1日400 mgが818例、1日800 mgが822例でした。
無増悪生存期間の中央値(PFS)は、400mg群で1.58年、800mg群で1.95年で800mgで有意PFSは延長しました(HR= 0.89、p=0.0422)。
全生存期間の中央値は、400mg群で4.08年、800mg群で4.05年で両群に有意差はありませんでした(HR= 1.00)。

サブセット解析では、exon11変異の患者は、exon9変異の患者より無増悪生存期間、全生存期間ともに有意に良好でした(p<0.0001)。

多変量解析で、予後に影響を与える因子を解析すると、exon11変異の患者では、400mgと800mgで無増悪生存期間、全生存期間に有意差はありませんでした。一方、exon9変異の患者では、400mgと比較して800mgで有意に無増悪生存期間と全生存期間が延長しました。

以上のことから、exon11変異の患者では、初期投与から1日800mgのGleevec(グリベック)の投与は必要がないこと、初期投与量は1日400 mgを目標とすること、1日400mgで腫瘍増殖が認められたら、SUTENTへの変更することが推奨されることがわかりました。一方、exon9変異の患者では、初期投与から1日800mgの投与で無増悪生存期間が延長する可能性があること、しかし全生存期間は400mgと800mgを比較して延長しないことがわかりました。

遺伝子型(exon変異)に基づく治療効果予測と治療戦略

POINT

● KIT遺伝子のexonの変異部位で治療効果が異なる
● exon 11では、副作用で投与が中止されることを回避する必要がある
● exon 9では、増量で治療効果が認められる可能性がある

解説
GISTでは、KIT遺伝子の一部であるエクソン(exon)9, 11, 13, 17の4領域のどれかに90%近くの突然変異があることが知られています。またその変異の80%以上はエクソン9, 11に生じます。

グリベックは、エクソン11に変異がある場合、腫瘍縮小率(PR)が高く、病気が進行するまでの期間や全生存期間が長いことが解っています。また、初期投与量が標準量400 mgと高用量800 mgを比較して、腫瘍増殖までの期間TTPや全生存期間OSに有意差がありません。つまり、エクソン11に変異があるGISTの患者では、副作用をモニターしながら継続困難にならないようグリベックの投与量を調整することが必要です。

一方、エクソン9に変異がある場合には、腫瘍縮小率(PR)は高くありませんが、増量することによって効果が高まることが解っています。標準量400 mgの投与と高用量800 mgの投与を比較すると、高用量で腫瘍増殖の期間が延長します。標準量と高用量で全生存期間に有意差はありませんが、エクソン9に変異があるGISTの患者では、可能な限り高用量でグリベックを服用させることが良いと考えられます。

実際には、どちらの突然変異であっても標準量400 mg程度のグリベック投与中に腫瘍増殖が認められた場合は、まずグリベックの増量を行い、腫瘍増殖が停止しない場合は、sutentの投与を行うことが適切であると思われます。

(1) S0033試験: JCO 26: 5360
746例の進行GIST患者を対象としたS0033試験で、gleevec 1日400 mgと1日800 mgで治療効果に違いがあるかどうかが報告されました。400 mgでは、腫瘍増殖が認められた時点で、800 mgへの増量が行われました。また、腫瘍の組織検査でKITの変異が同時に検査された428例を対象としてexonの変異とGleevec(グリベック)の投与量の関係が解析されました。
Exon 11、exon 9、野生型では、奏功率は71.7%、44.4%(p=0.007)、44.6%(p=0.0002)でした。腫瘍が増悪するまでの期間(TTP)の中央値は、24.7か月、16.7か月、12.8か月でした。全生存期間の中央値は、60か月、38.4か月、49か月でした。
Exon 9変異の患者32例では、Gleevec(グリベック)の高用量で奏功率が改善しました。1日400 mgでは17%、1日800 mgでは67%(p=0.02)でした。Exon 11変異や野生型では400 mgと800 mgで違いはありませんでした。


グリベックの投与期間

POINT

● グリベックは効果が認められなくなるまでは、投与を継続します。
● 投与を中止すると早期に腫瘍の増殖がはじまり、Gleevecの再投与が必要となる
● 投与を中止すると1年以内に70%の患者で腫瘍の増殖が始まります。
● gleevecの再投与をした場合、90%以上の症例で腫瘍増殖の制御が可能である。

解説
手術不能あるいは転移・再発GISTに対して、グリベックは腫瘍増殖停止(SD)も含めると80%以上の効果が認められます。そこで、画像検査でGIST腫瘍が液状・のう胞化し、PET検査で集積を認めなくなった状態(CR)では、グリベックをどの程度の期間投与するかが問題となります。現在のところ、画像ではCRでも残存腫瘍細胞があると考えられ、投与を中断すると、腫瘍増殖が再び起こります。そこで、グリベックを投与して腫瘍増殖停止・縮小あるいは消失した場合でも、グリベックの投与は中断しないで継続することがいいと考えられています。

(1) French Trial: BFR14, ASCO 2011

Gleevecを1年、3年間、そして5年間投与することで腫瘍増殖が制御できているGIST患者を対象に、治療を中断した群(I群)と治療を継続した群(C群)で違いがあるかどうかを調べる臨床試験が行われました。
1年間gleevecを服用した58例の患者が登録され、I群32例とC群26例を比較すると、I群では32例中26例で腫瘍が増殖し、24例でgleevecの再投与が行われました。無増悪生存期間の中央値はわずか7か月、1年無増悪生存率は28%でした。治療を再開すると約92%の患者で腫瘍増殖の制御が可能でした。一方C群では26例中8例で腫瘍の増殖が認められました。無増悪生存期間の中央値は29か月、1年無増悪生存率は84%でした。

3年間 gleevecを服用した50例の患者が登録され、I群25例とC群25例を比較すると、I群では、1年無増悪生存率は32%でした。治療を再開すると約100%の患者で腫瘍増殖の制御が可能でした。一方C群では1年無増悪生存率は92%でした。

3年間 gleevecを服用した患者では、I群では、1年無増悪生存率は65%でした。一方C群では1年無増悪生存率は100%でした。

C群とI群で後期耐性や生存期間に違いはなく、中断した後腫瘍増殖が認められた場合、gleevecを再投与することで、gleevecを投与し続けた場合と同様の経過をたどることがわかりました。

投与を中断すると、1年以内に70%の患者で腫瘍増殖が再開することから、副作用が許容されている場合、治療効果が認められている限りgleevecの投与は中断するべきではないことがわかりました。


B-2 SUTENT(スーテント)を使った標的治療

POINT

● Gleevec(グリベック)抵抗性GISTに投与する2次治療です
● 1日50 mgを4週間服用、2週間休薬のスケジュールで服用します
● 1日37.5 mgを連日服用する方法もあります
● 副作用で服用が困難にならないように工夫する必要があります
● exon 9変異と変異がない(wt)患者はexon 11の患者より効果があります。
● 奏功率は7%程度、腫瘍制御率は65%程度、そして無増悪生存期間の中央値は5.6ヶ月程度です。

治療効果について

POINT

● 奏功率は10%程度しか認められていません。
● 無増悪生存期間や全生存期間の延長が認められています。

(1) Study A (多施設共同無作為化比較試験)
Imatinib mesylate (Gleevec)に耐性となり腫瘍が増殖しているGISTの患者を対象に、Sutent®を投与する臨床試験が行われました。Imatinib耐性となったGISTの患者で、Sutent®の投与を受けた患者と、プラセボの投与を受けた患者で治療効果に差が生じるかどうかが検討されました。Sutent®は、50 mgのカプセルを1日1回1カプセル服用、4週間連日服用し2週間休薬するスケジュールでした。
Imatinib耐性の312例の患者のうち、207例の患者がSutent®を服用し、105例の患者様がプラセボを服用しました。

治療を開始して腫瘍増殖が確認されるまでの期間(TTP)は、Sutent®を服用した患者では、27.3週(6.3ヶ月)、プラセボを服用した患者では6.4週(1.5ヶ月)となり、腫瘍増殖が起こるまでの期間を4倍以上延長させることがわかりました(Hazard ratio=0.33, p<0.001)。プラセボ群は腫瘍が増加した時点でSUTENT(スーテント)を投与されましたが、SUTENT群は有意に生存期間が延長しました。

(2) Study B (single-arm, open-label, multicenter studies)
Imatinib耐性となり腫瘍が増殖しているGISTの患者を対象に、Sutent®を投与して腫瘍縮小が得られるかどうかが検討されました。55例のImatinib耐性のGIST患者が、50 mgのカプセルを1日1回1カプセル服用、4週間連日服用し2週間休薬するスケジュールでした。腫瘍縮小が得られた患者は55例中5例で9.1%でした。

(3)??
Imatinib mesylate (Gleevec)に耐性となり腫瘍が増殖しているGISTの患者を対象に、Sutent®を投与する臨床試験が行われました。Imatinib耐性となったGISTの患者で、Sutent®の投与を受けた患者と、プラセボの投与を受けた患者で治療効果に差が生じるかどうかが検討されました。Sutent®は、50 mgのカプセルを1日1回1カプセル服用、4週間連日服用し2週間休薬するスケジュールでした。
Imatinib耐性の243例の患者がSUTENTを服用し、104例の患者様がプラセボを服用しました。

全生存期間の中央値(Median OS)は、Sutent®を服用した患者では、73.9週、プラセボを服用した患者では35.7週となりました。


腫瘍のKIT遺伝子型による効果の違い(kinase genotypes of GIST)

POINT

● exon 9の方がexon 11の変異と比較して、SUTENT(スーテント)の腫瘍制御効果(CR+PR+SD)や奏功率、無増悪生存期間、全生存期間が良好である
● 野生型ではexon 9変異と同等の効果がある

解説

(1) JCO 26: 5352, Heinrich et al
SUTENT(スーテント)のphase I/II試験に登録された97例を対象に、遺伝子型による効果の違いが検討されました。exon 9変異の方がexon 11の変異と比較して、SUTENT(スーテント)の腫瘍制御効果(6か月以上続くCR+PR+SD)や奏功率は良好でした。Exon 9変異では腫瘍制御効果と奏功率は58%と37%、exon 11変異では34%と5%でした。無増悪生存期間、全生存期間の中央値は、exon 9で19.4か月、26.9か月、exon 11では5.1か月と12.3か月でした。野生型では、腫瘍制御効果は、56%、無増悪生存期間の中央値は19.0か月、全生存期間の中央値は30.5か月でexon 9変異と有意な差は認めなかった。

更なる臨床試験の結果をまつ必要がありますが、SUTENTはGleevecと違いexon 9変異のGISTの方が効果の高い傾向にあることが示唆されています。

B-3 3次治療以降(サルベージ療法)

POINT

● 全身性耐性の場合は、3次治療を検討します。
● 3次治療以降は確立していない
● sorafenibやnilotinibが有効な可能性がある
● gleevec→SUTENT→gleevecの再導入が効果がある可能性がある
● gleevecとSUTENTの併用療法が推奨される。
● 局所性(IM)耐性、局所性(SU)耐性では、耐性部位の外科切除を考慮する。

現在3次治療としては、3つの治療候補がある。
(1) Gleevecの再導入
(2) Gleevec + SUTENT併用療法
(3) その他の薬剤の投与


GISTでは、治療を継続していると、転移・再発巣によって、exonの変異部位が異なり、薬剤への反応性が異なってきます。そのため、まずgleevecの投与で、すべての転移巣が制御されていても、しだいに、2次・3次変異が生じてきて、後期耐性をおこします。しかし、すべての転移・再発巣がgleevec耐性になるとは限らず、gleevecで制御されている部位とgleevecで制御されない部位が混在してきます。

2次治療でSUTENTが投与された場合も同様で、imatinib反応性の部位、SUTENT反応性の部位、imatinibに反応しないがSUTENTに反応する部位、imatinibに反応するがSUTENTに反応しない部位など、腫瘍はヘテロな細胞集団となります。

その場合は、グリベックとスーテントの併用で腫瘍の制御が可能になる場合があります。注意する点は、グリベックとスーテントの標準量の投与では副作用のコントロールが困難であるので、初回治療、2次治療時の副作用を確認し、注意深く投与量や投与期間などスケジュールを決定する必要があります。

グリベック単独で再導入する治療は、上記の理由で、imatinib反応性の部位には有効ですが、imatinib抵抗性の部位には効果がないため、gleevecとSUTENTの併用療法で副作用のコントロールができない症例でのみ検討することが薦められます。

局所性(IM)耐性あるいは局所性(SUTENT)耐性、あるいは局所性(IM+SUTENT)耐性であれば、耐性を示す腫瘍巣を外科切除することも推奨されます。

他の薬剤

POINT

● Sorafenib(Nexavar)
● Nirotinib
● Dasatinib
● Masitinib
● everolimus(RAD001)
● Regorafenib

解説
いくつかの薬剤がgleevec耐性かつSUTENT耐性GISTに対してphase II試験で効果が指摘されている。現在phase III試験が進行中の薬剤があるが、現状ではエビデンスが示された有効な薬剤はない。

(1) Sorafenib (Nexavar) 2011 ASCO #10009

2011 ASCOで、sorafenibの3次治療の結果が報告されました。1次治療としてimatinib(gleevec/glivec)が投与され耐性になった患者あるいは1次治療でimatinib、2次治療でSutentが投与され耐性になった患者を合わせて38例に、3次治療としてsorafenibが投与され効果が検討されました。

1次治療Imatinib(IM)の腫瘍コントロール率は80%以上、無増悪生存期間の中央値は20-24か月、2次治療SUTENT(SU)の腫瘍コントロール率は65%程度、無増悪生存期間の中央値は5.6か月程度です。

3次治療sorafenibは1回400mg経口、1日2回服用で、28日間連日服用で行われました。しかし、約59%の患者で副作用のため減量が行われました。38例中、CRは0%、PRは13%、SDは55%、腫瘍制御率は68%、PD7例32%でした。Exon 11及びexon 9変異の患者療法で腫瘍のコントロールが得られていました。無増悪生存期間の中央値は、IM耐性患者で3.4か月、IM/SU耐性患者で5.2か月でした。全生存期間の中央値は、IM耐性患者で13.6月、IM/SU耐性患者で10.5か月でした。3次治療としてsorafenibが有効な可能性があります。

(2) Nilotinib ASCO 2008 #10523
未成熟なデータですが、2008 ASCOで、nilotinibの3次治療の結果が報告されました。1次治療でimatinib、2次治療でSutentが投与され耐性になった患者42例に、3次治療としてnilotinibが投与され効果が検討されました。
1次治療Imatinib(IM)の腫瘍コントロール率は80%以上、無増悪生存期間の中央値は19-21か月、2次治療SUTENT(SU)の腫瘍コントロール率は7-9%程度、無増悪生存期間の中央値は8.2か月程度です。
Nilotinibは経口のTKIで、KIT, PDGFRα, BCR-ABLを抑制する薬です。
3次治療nilotinibは1回400mg経口、1日2回服用で投与されました。42例中、PRは4例、SDは15例で腫瘍制御率は45%でした。
症例数、観察期間ともに少なく未成熟なデータのため、治療効果について確実なことは言えませんが、3次治療としてnilotinibが有効な可能性があります。

(3) Imatinib + RAD001, ASCO 2008 # 10519
1次治療IM耐性となった患者あるいは1次治療IM耐性で2次治療にも耐性(70%以上はsutent耐性)になった患者に対して、imatinib+RAD001を併用して効果があるかが検討されました。
IM耐性患者28例に、2次治療としてImatinib+RAD001が投与されると、無増悪生存期間の中央値は1.9か月、6か月無増悪生存率は12.7%、SDは35.7%に認めました。
一方、IM耐性かつ2次治療でSUTENTを含む他のTKIを投与され耐性になった患者47例に、3次治療としてImatinib+RAD001が投与されると、無増悪生存期間の中央値は2.5か月、6か月無増悪生存率は20.1%、SDは42.6%に認めました。
症例数、観察期間ともに少なく未成熟なデータのため、治療効果について確実なことは言えませんが、2次治療あるいは3次治療としてimatinibにRAD001を併用することが有効な可能性があります。


(4) Regorafenib ASCO2011

1次治療IM耐性、そして2次治療SU耐性になった患者に対して、Regorafenibが効果があるかが検討されました。
IM/SU耐性患者33例に、3次治療としてRegorafenibが投与されると、6か月無増悪生存率は10.0%、4週間以上SDは64%、PRは9%に認めました。

(5) Dasatinib ASCO2011

1次治療IM耐性、そして2次治療SU耐性になった患者に対して、Dasatinibが効果があるかが検討されました。
IM/SU耐性患者50例に、3次治療としてDasatinibが投与されました。IM耐性が100%、そしてSU耐性が80%でした。Exon11変異は56%、Exon9変異は9%、野生型は31%でした。Choiの効果判定では、PR22%、SD24%、そして腫瘍制御率は46%でした。6ヶ月以上SDは20%、そして、6ヶ月無増悪生存率は20%でした。無増悪生存期間の中央値は1.8ヶ月、全生存期間の中央値は19ヶ月でした。


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すい臓癌化学療法
すい臓癌化学療法

新板橋クリニック

すい臓癌化学療法
Version 2012.01

1 背景

POINT

 発見時にすでに手術不能進行・再発すい臓がんである例が多く、早期発見の困難な病気です。

 すい臓癌と診断された患者のおよそ15%から20%程度が手術可能な患者です。残りの患者は、診断時にすでに手術不能進行・再発すい臓癌です。

 手術不能進行・再発膵臓がんでは、化学療法を施行することで、無増悪生存期間が4-5ヶ月、全生存期間が8-10ヶ月程度得られています。

 GemcitabineとS-1の2つのKey Drugを使いきることが重要です。

2 治療効果の判定

POINT

 症状改善効果や腫瘍マーカーの低下が治療効果の判定に有用です。

測定可能な腫瘍病変の大きさの変化で治療効果の判定がなされます(RECISIT)。しかし、実臨床では腫瘍の縮小がなくても、治療により症状(疼痛や体重減少など)の改善や体調の向上が認められています。米国で、Gemcitabineが承認された際の成績は、腫瘍縮小効果(11%程度)よりも症状改善効果(27%)が評価されました。つまり、実臨床では、症状や体調の改善効果も評価されることになります。
また、生存期間と腫瘍マーカーのCA19-9の低下が良い相関関係にあると報告されています。治療前値より25%以上CA-19-9が低下した群とそうでない群では、生存期間が9.6ヶ月と4.6ヶ月で2倍以上違うことが報告されています。
3 手術不能進行・再発すい臓癌

POINT

 現在の標準的化学療法では、全生存期間の中央値(MOS)は8ヶ月から10ヶ月程度です。

 gemcitabine単独治療が世界の標準治療となっています。

 gemcitabineを含んだ併用化学療法や分子標的治療薬の併用が試みられていますが、gemcitabine単独治療に優越性を示す治療は、gemcitabine+Erlotinib併用治療のみです。

 gemcitabine+capecitabineの併用治療はgemcitabine単独治療より優れている可能性がある。

 放射線療法併用化学療法の効果は明らかでない。

 FOLFIRINOXが有効である可能性があります。


3-A 初回治療(1st line)

POINT

 gemcitabine単独治療が世界の標準治療となっている。
 gemcitabineを含んだ併用化学療法や分子標的治療薬の併用が試みられているが、gemcitabine単独治療に優越性を示す治療はgemcitabine + Erlotinib併用治療のみである(約0.5か月)。
 gemcitabine+capecitabine併用治療はgemcitabine単独治療より優れている可能性がある。
 放射線療法併用化学療法の効果は明らかでない。


3-A-1 単独治療

(1) 5-FU
1950年代からさまざまな臨床試験が行なわれているが、奏効率は10%以下であり、生存期間の中央値は10週から24週程度です。

(2) Gemcitabine vs 5FU
GEM単独の奏効率は6%から11%と報告されています。しかし、米国のPhase II臨床試験では、奏効率は11%でしたが、症状(疼痛や体重減少など)改善効果は27%認められました。そこで、症状改善効果と生存期間を治療効果として評価する第III相臨床試験が行なわれました。126例の患者が、5-FU単独治療とGemcitabine単独治療に振り分けられました。両群の治療で奏効率に差はありませんでしたが、症状改善効果はGEM群で24%、5-FU群で5%でした。1年生存率はGEM群で18%、5-FU群で2%でした。全生存期間の中央値は、GEM群で5.65ヶ月、5-FU群で4.41ヶ月でした。この臨床試験には、批判される部分もありますが、この成績をもとに米国では、GEMが手術不能進行・再発すい臓癌の初回治療(1st line)として承認されました。

(3) Capecitabine
Capecitabine単独治療での奏功率は、7%前後と報告されています。

3-A-2 併用化学療法

Gemcitabineに数多くの薬剤が併用され、Gemcitabine単独治療よりも高い臨床効果(生存期間の延長)を得ることができないか検討されています。しかし、今までのところ、Gemcitabine単独治療より高い効果が確認されている併用治療は、GEM + erlotinib (Tarceva)のみです。Gemcitabine+capecitabine併用療法については、今後の臨床試験の結果をまつ必要があります。

(1) Gemcitabine + 5-FU
3つの第III相臨床試験が報告されていますが、GEM単独治療と比較して生存期間の延長は認められませんでした。


(2) Gemcitabine + capecitabine
1件の第III相臨床試験(ASCO 2005 abstract #4010)では、319例の患者がGEM単独治療(159例)とGEM + capecitabine併用治療(160例)に振り分けられ、生存期間の中央値は、GEM + capecitabine群で8.4ヶ月、GEM群で7.3ヶ月で有意差が認められませんでした。無増悪生存期間の中央値はGEM + capecitabine群で4.8ヶ月、GEM群で4.0ヶ月で同様に有意差が認められませんでした。

一方Cunninghamらの報告(JCO 27:5513-5518)では、手術不能局所進行すい臓がんあるいは転移性すい臓がんを対象に、533例の患者がGEM単独治療(266例)とGEM + capecitabine併用治療(267例)に振り分けられ、生存期間の中央値は、GEM + capecitabine群で7.1か月、GEM群で6.2ヶ月で有意差が認められませんでした(HR=0.86,p=0.08)。
無増悪生存期間の中央値はGEM + capecitabine群で5.3ヶ月、GEM群で3.8ヶ月で有意にGEM+CAP群でPFSは延長しました(HR=0.78, p=0.004)。
奏功率は、GEM+CAP群で19.1%、GEM単独群で12.4%と、同様に有意差が認められました(p=0.034)。
同時に報告されたmeta解析では、3つの第3相臨床試験をプールして解析されました。935例の患者で、GEM+CAP群はGEM単独群と比較して、有意に生存期間が延長しました(HR=0.86,p=0.02)。


(3) Gemcitabine + cisplatin
4件の第III相臨床試験が行なわれましたが、GEM + cisplatinとGEM単独群で生存期間に有意差は認められませんでした。

JC 28:1645では、手術不能進行・転移膵臓がんを対象としたgemcitabine単独治療(G)とgemcitabineとcisplatinの併用療法(GC)の第III相無作為化比較臨床試験(GIP-1試験)が報告されました。主要評価項目は全生存期間(OS)、副次評価項目は無増悪生存期間(PFS)、奏功率などでした。1st line治療として、G群199例、GC群201例が登録され、全生存期間の中央値は、G群8.3か月、GC群は7.2か月、1年生存率はそれぞれ34%, 30.7%となりました(HR: 1.10, p=0.38)。無増悪生存期間の中央値(PFS)は、G群で3.9か月、GC群で3.8か月(HR:0.97, p=0.80)となりました。また奏功率は、G群で10.1%、GC群で12.9%となり、G群とGC群で有意な差はなく、Cisplatinのgemcitabineへの上乗せ効果は否定されました。一方、有害事象では、血液毒性(好中球減少、貧血、血小板減少)は有意にGC群で増加しました。

(4) Gemcitabine + CPT-11
1件の第III相臨床試験で、GEM単独と比較して有意差はありませんでした。

(5) Gemcitabine + oxaliplatin (GEMOX):

① GERCOR Intergroup trial
GEMOX群とGEM単独群は、奏効率は27%と17%、無増悪生存期間の中央値は5.8ヶ月と3.7ヶ月でしたが、生存期間の中央値は9ヶ月と7.1ヶ月で有意差を認めませんでした。

② E6201: JCO 27: 3778 2009
手術不能あるいは転移性膵がんを対象として、GEM単独治療群(1000 mg/m2/30分)、fixed dose rate GEM (1500 mg/m2/150分、FDR GEM群)とGEMOX群の3群を比較する第III相臨床試験が行われました。主要評価項目は、全生存期間と1年生存率でした。832例の患者が登録され、GEM群275例、FDR GEM群277例、GEMOX群272例が解析されました。全生存期間の中央値は、GEM群4.9か月、FDR GEM群6.2か月、GEMOX群5.7か月で有意差はありませんでした。1年生存率も、GEM群16%、FDR GEM群21%、GEMOX群21%で有意差は認められませんでした。

☆現状では、GEMにoxaliplatinを上乗せする効果は証明されていません。

(6) Gemcitabine + erlotinib: NCIC trial
GEM + erlotinib群とGEM群では、生存期間の中央値は6.4ヶ月と5.9ヶ月、1年生存率は23%と17%でした。2週間程度の生存期間の延長が認められており、erlotinibは欧米でGemcitabineとの併用治療で承認されています。しかし、2週間の延長がどの程度臨床効果として評価されるかは議論のあるところです。

(7) Gemcitabine + bevacizumab: CALGB 80303: JCO 28:3617

切除不能進行すい臓がんが602例登録され、GEM単独群が300例、GEM+Bevacizumab併用群が302例が比較検討されました。1次エンドポイントは全生存期間(OS)、2次エンドポイントは、無増悪生存期間、奏功率などでした。
GEM単独群と併用群を比較すると、全生存期間の中央値は、5.8カ月と5.9カ月、無増悪生存期間の中央値は3.8カ月と2.9カ月、奏功率は13%と10%で、それぞれ両群に有意差はありませんでした。

(8) Gemcitabine + cutuximab: SWOG 0205, JCO 28:3605

手術不能局所進行すい臓がんあるいは転移性すい臓がん745例を対象に、gemcitabine単独治療(369例)とGem + cetuximab併用治療(366例)が比較検討されました。1次エンドポイントは全生存期間(OS)、2次エンドポイントは、無増悪生存期間(PFS)、治療に抵抗性を示すまでの期間(TTF)、奏功率などでした。
GEM群とGEM + Cet併用群を比較すると、奏功率は14%と12%、無増悪生存期間は3.0カ月と3.4カ月、治療に抵抗性を示すまでの期間(TTF)は、1.8か月と2.3か月、全生存期間の中央値は5.9か月と6.3か月となり両群に優位な差は認められませんでした。

(9) Gemcitabine(G) + erlotinib(E) + bevacizumab(B): AViTA study
転移性すい臓がんを対象に、GEM +erlotinibとGEM + erlotinib+BVを比較する第III相臨床試験が行われました。GE群は301例、GEB群306例が登録され無増悪生存期間の中央値は、GE群で3.6か月、GEB群で4.6か月となりGEM + erlotinib+ BV群で有意差をもって無増悪生存期間が延長しました(HR=0.73,p=0.0002)。一方、全生存期間の中央値は、GE群で6.0か月、GEB群で7.1か月となり両群に有意差は認められませんでした。
つまり、Gemcitabine+erlotinib併用療法に更にBevacizumabを上乗せしても効果が得られないことがわかりました。

皮膚症状(rash)をもとにしたサブ解析では、皮膚症状を認めない患者群(214例)では、全生存期間の中央値はGE群4.3か月、GEB群で5.0か月でしたが、grade 1のrashを認めた患者群(211例)では、GE群7.1か月、GEB群7.4か月となりました。Grade 2以上のrashを認めた患者群(182例)では、GE群8.3か月、GEB群で8.4か月となりました。
GE群とGEB群を合わせた場合では、rashを認めない場合、全生存期間の中央値は4.8か月、grade 1では7.4か月、grade 2以上では8.0か月となり、rashを認めた場合有意に生存期間が延長しました。

CRPをもとにしたサブ解析では、CRPが低値(1.4以下)であると生存期間が有意に延長しました。

EGFR阻害剤ではrashの発現と治療効果(奏功率や生存期間の延長)には相関があることがすでに報告されています。CRPについては今後の臨床試験の結果をまつ必要があります。


(10) FOLFIRINOX : ASCO 2010 #4010

転移性すい臓がんを対象に、5-FU/LV療法とCPT-11とoxaliplatinを併用するFOLFIRINOX療法(F群)とGEM(G群) を比較する第III相臨床試験が行われました。342例が登録され、G群は171例、F群171例で比較検討が行われています。主要評価項目は、全生存期間、副次的評価項目は、無増悪生存期間、奏功率などです。F群がG群と比較して優越であることを証明する試験でした。
中間解析では、奏功率はF群で31%、G群で9.4%(p=0.0001)、無増悪生存期間の中央値は、F群で6.4か月、G群で3.3か月(HR= 0.47、p<0.0001)となりました。全生存期間の中央値は、F群で11.1ヶ月、G群で6.8ヶ月となり(HR= 0.57、p<0.0001)、F群の優越性が証明されました。
GEM群と比較して、これほど明確に優越性を示した治療は今までなかったことから、非常にインパクトのある結果といえます。

FOLFIRINOX:
Oxaliplatin:85 mg/m2 Q2W
CPT-11: 180 mg/m2 Q2W
LV: 400 mg/m2 on day 1
5-FU bolus of 400 mg/m2 followed by a 46-hr infusion of 5-FU of 2400 mg/m2
biweekly

(11) Gemcitabine + sorafenib: BAYPAN study, ASCO2011, #4028

手術不能局所進行すい臓がんあるいは転移性すい臓がん104例を対象に、Gem + sorafenib併用治療(52例) とGem + placebo併用治療(52例)が比較検討されました。1次エンドポイントは無増悪生存期間(PFS), 2次エンドポイントは、全生存期間(OS)、奏功率などでした。

GEM+sorafenib群とGEM + placebo併用群を比較すると、奏功率は25%と19%、無増悪生存期間は3.8カ月と5.6カ月、全生存期間の中央値は8.5か月と9.2か月となり両群に優位な差は認められませんでした。
3-A-3 日本

POINT

 Gemcitabine
 TS-1
 Tarceva

の3種類が保険適応になっています。

 TS-1のGemcitatineに対する非劣性が証明されました。
 TS-1+Gemcitabine(GS)療法のG単独治療に対する優越性は、第3相臨床試験では証明されていません。
 1st lineは、gemcitabineあるいはS-1単独療法が推奨されます。
 有症状膵がん(黄疸例、がん性疼痛例など)では、GS療法を1次治療とすることが考慮されます。
 Tarcevaは、現在のところ、1st lineでgemcitabine+tarcevaが考慮されますが、積極的に推奨されるものではありません。

TS-1

TS-1単独治療

(1) TS-1の後期第II相臨床試験

奏効率37.5%、生存期間の中央値が8.8ヶ月であったことから、手術不能進行・再発すい臓癌に承認されました。また、GEST試験で、TS-1単独治療がG単独治療と比較して、非劣性であることが証明されました。



併用化学療法

TS-1+Gemcitabine (GS療法)

(1) GEMSAP試験:ASCO2011

病理学的にあるいは画像診断にて確認された、局所進行または転移性膵がん患者を対象にして、Gemcitbine単独治療とTS-1+Gemcitabine併用治療を比較する第2相臨床試験が行われました。

前治療歴がない局所進行あるいは転移性膵がん患者834例が、Gemcitabine単独群(G群)53例とTS-1+Gemcitabine併用群(T+G群)53例に割り付けされました。G群では、局所進行13例、転移性40例、T+G群では、局所進行15例、転移性38例でした。主要評価項目は無増悪生存期間(PFS)、副次的評価項目は奏功率、全生存期間、などでした。

G群はGemcitabine 1000mg/m2 on days 1, 8, 15
T+G群はTS-1 80-120mg/body 2週間投与、Gemcitabine 1000mg/m2 on day 1 and 15 4週間で1サイクル

無増悪生存期間の中央値は、G群が3.6ヶ月、T+G群が5.4ヶ月(HR=0.64、p=0.036)となり、T+G群はG群と比較して有意にPFSが延長しました。

全生存期間の中央値は、G群が8.8ヶ月、T+G群が13.5ヶ月となりましたが、有意差はありませんでした(HR=0.72、p=0.104)。また、奏功率は、G群で9.4%、T+G群で18.9%となりました。

第2相臨床試験ですが、T+G併用治療がG単独治療と比較して優越であることが示されました。

(2) JACCRO:ASCO 2011,#4029

病理学的にあるいは画像診断にて確認された、局所進行または転移性膵がん患者を対象にして、Gemcitbine単独治療とTS-1+Gemcitabine併用治療を比較する第2相臨床試験が行われました。

前治療歴がない局所進行あるいは転移性膵がん患者が、Gemcitabine単独群(G群)59例とTS-1+Gemcitabine併用群(T+G群)53例に割り付けされました。主要評価項目は奏功率、副次的評価項目は、腫瘍が増悪するまでの期間(TTP)、全生存期間(OS)などでした。

G群はGemcitabine 1000mg/m2 on days 1, 8, 15
T+G群はTS-1 80-120mg/body 2週間投与、Gemcitabine 1000mg/m2 on day 1 and 15 3週間で1サイクル

奏功率は、G群が6.8%、T+G群が28.3%で、有意にT+G群が上回っていた(p=0.005)。また、腫瘍コントロール率は、G群が44.1%、T+G群が64.2%で、有意にT+G群が上回っていた(p=0.039)。

TTPの中央値は、G群が4.7ヶ月、T+G群が6.0ヶ月となり、T+G群はG群と比較して有意にPFSが延長しました(HR=0.51、p=0.001)。

全生存期間の中央値は、G群が8.3ヶ月、T+G群が13.9ヶ月となり、有意にT+G群で延長していました(HR=0.61、p=0.033)。

第2相臨床試験ですが、T+G併用治療がG単独治療と比較して優越であることが示されました。

(3) GEST試験

病理学的にあるいは画像診断にて確認された、局所進行または転移性膵がん患者を対象にして、Gemcitbine単独治療とTS-1+Gemcitabine併用治療(GS療法)の優越性、TS-1(S療法)の非劣性、を比較する第3相臨床試験が行われました。

前治療歴がない局所進行あるいは転移性膵がん患者が、Gemcitabine単独群(G群)277例とTS-1+Gemcitabine併用群(GS群)277例、TS-1群(S群)280例に割り付けされました。主要評価項目は全生存期間(OS)、副次的評価項目は、無増悪生存期間(PFS)、奏功率などでした。

G群はGemcitabine 1000mg/m2 on days 1, 8, 15
GS群はTS-1 60-100mg/body 2週間投与、Gemcitabine 1000mg/m2 on day 1 and 15、3週間に1サイクル
S群は、TS-1 80-120mg/body 4週間投与

全生存期間の中央値は、G群が8.8ヶ月、GS群が10.1ヶ月、S群が9.7ヶ月となりました。S群はG群と比較して非劣性が証明されました(HR= 0.96、p<0.001)。一方GS群はG群に対して優越性を証明できませんでした(HR=0.88、p=0.15)。

無増悪生存期間の中央値は、G群が4.1ヶ月、GS群が5.7ヶ月、S群が3.8ヶ月となりました。S群はG群と比較して非劣性が証明されました(HR=1.09、p=0.02)。同様に、GS群はG群と比較して優越性が証明されました(HR= 0.66,p<0.001)。

奏功率は、G群が13%、GS群が29%、S群が21%となりました。

また、QOL評価では、GS群は、G群と比較して、有意に良好となりました。

以上から、S群はG群と比較して非劣性であることが証明されました。また、GS療法群はG群と比較してOSで優越性を証明できませんでした。しかし、PFSは有意に延長し、そしてQOLが有意に改善していたことから、特に有症状例(疼痛など)では、GS療法が1次治療として適している可能性が示唆されました。

3-B 2次治療(2nd line)
POINT

 有効な2次治療は認められていません。
 GEMに抵抗性を示した場合、2次治療としてTS-1もしくはGEM+TS-1治療、S-1に抵抗性を示した場合は、2次治療としてGEMあるいはGEM+S-1治療が推奨されます。
 明確なエビデンスはまだありませんが、S-1とGEMを使い切ることが最大のOSを得る可能性があります。

(1) CONCO-003
Gemcitabineに抵抗性を示した進行すい臓がんを対象に、2次治療としてFU/LV療法とFU/LV/oxaliplatin療法を比較する臨床試験が行われました。168例の患者が登録され、FU/LV群に91例、FU/LV/Oxaliplatin群に77例が割り付けられ、FU/LV群84例、FU/LV/oxaliplatin群76例が治療をうけ解析されました。無増悪生存期間の中央値はFU/LV群で9週、FU/LV/oxaliplatin群で13週(p=0.012)、全生存期間の中央値は、13週と26週となりました(p=0.014)。
2次治療としてFU/LV/oxaliplatinの可能性が報告されました。

(2) TS-1
Gemcitabineに抵抗性を示した進行すい臓がんを対象に、2次治療としてTS-1 療法の効果を検討する第2相臨床試験が行われました。奏功率は15%、全生存期間の中央値は4.5ヶ月でした。

4 補助化学療法

POINT

 術後(R0 or R1)に補助化学療法を行うのが標準治療である。
 術後補助化学療法としてgemcitabineが推奨されます。
 ヨーロッパでは5FU/FA持続静注療法も推奨されています。
 gemcitabineと5FU/FA持続注入療法で有意差はありません。
 術後に補助放射線療法を行うことは推奨されません。

(1) Gemcitabine:CONKO-001
組織学的に通常型すい臓癌と診断された、R0もしくはR1切除を受けた368例の患者が、術後補助化学療法としてGemcitabineの投与を受ける群と手術単独群に振り分けられました。Gemcitabineの投与を受けた群(179例)の無病生存期間の中央値は13.4ヶ月、手術単独群(175例)では6.9ヶ月となり有意差をもって、gemcitabine群で無病生存期間の延長が認められました(p<0.001)。一方、全生存期間の中央値はgemcitabine群で22.8ヶ月、手術単独群では20.2ヶ月となり、gemcitabine群で優位差をもって全生存期間の延長が認められました(p=0.005)。5年生存率はGEM群で21.0%、手術単独群は9.0%となりました。
現状は、CONKO trialの結果をうけて、通常型すい臓がんの手術後の補助化学療法には、Gemcitaibne単独治療が1次治療として推奨されます。

(2) ESPAC adjuvant trial Br J Cancer 2009; 100:246
術後の補助化学療法として5FU/FA持続注入療法を受ける群233例(CT群)と手術単独群225例(S群)が比較されました。2年生存率、5年生存率は、CT群で49%と24%、S群で37%と14%となり、有意にCT群で生存が延長していました(HR: 0.68, p=0.001)。

(3) Gemciabine vs 5FU/FA持続注入療法 ESPAC-3 (v2) ASCO 2009 abstract # 4505
すい臓がん切除後(R0 or R1)の標準的補助療法とされている、gemcitabineと5FU/FA療法を比較する臨床試験が行われました。R0あるいはR1手術を受けた膵臓がん患者を対象として、術後の補助化学療法にgemcitabine(G群)あるいは5FU/FA持続注入療法(FU/FA群)が施行されました。G群537例とFU/FA群551例を比較すると、G群で血液毒性が有意に多く、FU/FA群で有意に消化器系症状(吐き気、下痢)が多く認めました。
全生存期間の中央値は、G群で23.8か月、FU/FA群で23か月となり有意差は認めませんでした(HR: 0.94, p=0.39)。無再発生存期間の中央値は、G群で14.3か月、FU/FA群で14.1か月となり有意差を認めませんでした(HR: 0.95, p=0.44)。

(4) 放射線化学療法 ESPAC-1試験 NEJM 2004; 350:1200
R0あるいはR1手術を受けた膵臓がん患者に、術後補助療法として、無治療、化学療法(5-FU/FA持続注入療法:CT)、化学放射線療法(CRT)、化学放射線療法後に化学療法を続ける(CRT→CT)群を比較する2x2デザインの試験が行われました。CRT群145例と非CRT群144例を比較して、2年生存率と5年生存率は、CRT群で28.5%、10.0%、非CRT群で41.4%、19.6%となり放射線療法を併用することの優越性は否定されました(HR: 1.28, p=0.053)。
一方、術後化学療法群147例(CT)と手術単独群142例(no CT)を比較すると、2年生存率、5年生存率と全生存期間の中央値は、CT群で39.7%、21.1%と19.7カ月、no CT群で30%、8.4%と14カ月となり、有意にCT群が生存率が向上しました(HR: 0.71, p=0.009)。

(5) 術後補助化学療法のまとめ
術後に化学療法を行うのが標準治療である。手術単独群(S)と術後化学療法(S+C)を比較すると、全生存期間の中央値と5年生存率は、
ESPAC-1では、S群は14か月と8.4%、S+C群は19.7か月と21.1%
CONKO 01では、S群は20.2か月と11.5%、S+C群は22.8か月と22.5%
ESPAC-3では、FU/FAはS+C群で23.0か月と20%
ESPAC-3では、gemcitabineはS+C群で23.6か月と22%
となります。
術後化学療法群は、FU/FA持続注入療法あるいはGemでほぼ一定した結果が出ていることがわかります。全生存期間の中央値はおよそ23か月程度、5年生存率は20から22%程度です。


新板橋クリニック


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神経内分泌腫瘍の治療ガイド
NET(神経内分泌腫瘍)の治療

NET(神経内分泌腫瘍)の治療

Version 2012.01

1. 概説
NET(神経内分泌腫瘍)とは、神経内分泌細胞が腫瘍化したもので、ホルモンの過剰分泌が起こります。

NETsは、免疫染色(クロモグラニンA:CgA、シナプトフイジン)などからみた分化度、生物学的活性からみた悪性度が、治療法を決定する重要な指標となっています。分化度と悪性度は必ずしも一致しませんが、高分化型は低悪性度、そして、低分化型は高悪性度であると考えられます。

2010年に提唱されたWHO分類では、Ki-67指数と核分裂像数を基にした細胞の増殖動態を指標として、NETG1、NETG2、そして、NECに分類しています。

2010年WHO分類

分類 Ki-67指数(%) 核分裂像数(10HPF)
神経内分泌腫瘍(NET) NETG1 <2 <2
NETG2 3 〜 20 2 〜 20
神経内分泌がん(NEC) NEC >20 >20



2.NETの発症頻度、予後、そして、予後因子

アメリカのSEERデータベースによれば、NETの原発部位は、肺がもっとも多く、次いで小腸や直腸の順番となります。そして、NETの有病率は、大腸がんに次いでおり、胃がん、膵臓がん、食道がんなどの他の消化器がんより多い頻度となっています(日本では胃がんの頻度が多いため、状況は異なります)。

NETの5年生存率は68.1%で、もっとも予後不良なのは膵臓NETで37.6%、そして、もっとも予後良好なのは直腸NETで88.6%でした。

Ki-67指数と予後は相関し、2010年WHO分類に反映されています。

機能性NETでは、P-NETには、インスリノーマ、ガストリノーマ、グルカゴノーマ、VIPオーマ、ソマトスタチノーマがあります。また、消化管NETには、セロトニン産生腫瘍(いわゆるカルチノイド腫瘍)があります。

3.NET治療

 原発巣の外科切除
 転移巣の外科切除

腫瘍の外科切除が第1選択となります。

肝転移は予後不良とされており、肝切除、RFA(ラジオ波焼却療法)、TACE(肝動脈化学塞栓療法)、オクトレオチドなどの治療が試みられています。

全身化学療法は、

 ソマトスタチンアナログ製剤(オクトレオチド)
 Sunitnib
 エベロリムス

などが投与されています。化学療法は、機能性NETの場合、ホルモン過剰産生症状の改善と腫瘍増殖の制御が目的となります。また、非機能性NETの場合、腫瘍増殖の制御が目的となります。


4. 治療効果

4-1 消化管あるいはすい臓NET(G1あるいはG2)に対する治療
初回治療(1st line)

POINT

 ソマトスタチンアナログが有効です。

(A) Somatostatin analogs(ソマトスタチンアナログ)

NET細胞には、ソマトスタチン受容体が高発現しているので、それを標的としたソマトスタチンアナログ製剤の有効性が明らかとなっています。

ソマトスタチンアナログは機能性消化管・膵臓神経内分泌腫瘍(NET)の症状コントロールに有効性が認められています。そして、腫瘍増殖抑制効果についても有効性が明らかになっています。

(1) PROMID試験:JCO 27:4656

中腸原発の手術不能あるいは転移性の「高分化型」神経内分泌がんの患者を対象にしました。膵臓原発あるいは胸部(肺)原発のNETは除外されました。未治療の患者をプラセボ群(P群)とOctreotide LAR 30mg 月1回筋肉注射群(O群)に無作為に割り付けしました。治療は腫瘍が増殖するか患者が死亡するまで継続されました。

主要評価項目は腫瘍増悪が認められるまでの期間(TTP)、副次的評価項目は全生存期間と奏功率でした。

90例の患者が登録され、内5例が登録から除外され、85例の患者がO群とP群に割り付けされました。機能性腫瘍が33例、非機能性腫瘍が52例でした。

O群が42例、P群が43例に割り付けされ、ITT解析では、腫瘍が増悪するまでの期間の中央値は、O群で14.3ヶ月、P群で6ヶ月(HR= 0.34、p=0.00072)でした。治療を開始してから6ヶ月後に、腫瘍の安定化が認められている(SD)患者の比率は、O群で66.7%、P群で37.2%でした。

機能性、非機能性に関わらず、O群では治療に対する効果が認められました。

2次治療(2nd line)

NET細胞では、VEGF、mTORなどのシグナル伝達を阻害することで、腫瘍細胞増殖抑制が認められています。

POINT

 SUTENTの有効性が示唆されています。
 mTOR阻害剤の有効性が示唆されています。


Sunitnib (SUTENT)


(1) Sunitinib vs placebo:第3相無作為化臨床試験、NEJM364:501 and ASCO 2011 #4008

病理学的に高分化型であることを確認された進行性あるいは転移性P-NETが対象とされました。171例の患者が登録され、SUTENT群86例、プラセボ群85例に振り分けられました。両群とも約50%が非機能性のP-NETでした。Ki-67は両群とも36例で検討され、悪性度は両群ともほぼ均等でした。臨床試験前に、SUTENT群の66%、プラセボ群の72%で全身化学療法が施行され、内訳はStreptozocinが約30%程度、Anthracyclineが31-41%、フッ化ピリミジン系が23-29%でした。

S群では、37.5mgが連日投与されました。主要評価項目は無増悪生存期間、副次的評価項目は、全生存期間、奏功率などでした。

無増悪生存期間の中央値は、S群で11.4ヶ月、P群で5.5ヶ月となり有意にS群で延長しました(HR=0.42、p<0.001)。奏功率は、S群で9.3%、P群で0%でした。

観察期間中に、S群では9例が死亡し、P群では21例が死亡しました。死亡リスクは、SUTENT群はP群と比較して、59%低下しました(HR=0.41、p=0.02)。

全生存期間の中央値は、S群で30.5ヶ月、P群で24.4ヶ月となりました(HR=0.737、p=0.1926)

上記の結果から、SUTENTは進行「高分化型」pNETに有効な治療であることが証明されました。

この試験の問題点は、悪性度判定に必要なKi-67 indexが40%程度の患者にしか測定されていないため、悪性度の統一がなされていないこと、S群とプラセボ群で前治療歴に差があること、診断されてからの期間が、プラセボ群が3.2年、S群が2.4年と背景に差があることなどがあげられます。



Everolimus

(1) JCO 2009:69
オクトレオチドに抵抗性あるいは治療中の、膵臓内分泌腫瘍(pNET)の患者を対象に、Everolimusの効果を検討する、第II相臨床試験が施行されました。

患者は、Everolimus1日10mgを服用する群(E群)115例とEverolimus1日10mgとオクトレオチドLARを併用する群(E+O群)45例が登録されました。

診断されてからの期間は、E群では2年から5年が33%、5年以上が34.8%、E+O群では46.7%、40%でした。「高分化型」はE群で76.5%、E+O群で77.8%でした。

E群では、奏功率は9.6%(11例)、不変が67.8%(78例)でした。腫瘍が増悪するまでの期間の中央値(PFS)は、9.7ヶ月でした。

E+O群では、奏功率は4.4%(2例)、不変が80%(36例)でした。腫瘍が増悪するまでの期間の中央値(PFS)は、16.7ヶ月でした。

(2) Everolimus vs Placebo:NEJM 364、514:RADIENT-3

病理学的にlow gradeあるいはintermediate gradeであることを確認された進行性あるいは転移性P-NETが対象とされました。410 例の患者が登録され、Everolimus群207例、プラセボ群203例に振り分けられました。主要評価項目は、無増悪生存期間(Progression Free Survival)でした。

両群とも約82-84%が高分化型、15-17%が中分化型の腫瘍でした。最初の診断から2年以上経過している患者が57-63%を占めていました。2カ所以上の腫瘍巣を持つ例が、70-75%を占めており、肝転移は92%に認めました。

臨床試験前に、E群の49%、プラセボ群の50%でソマトスタチンアナログ製剤の治療が施行されていました。

E群では、10mgが連日投与されました。

無増悪生存期間の中央値は、E群で11.0ヶ月、P群で4.6ヶ月となり有意にE群で延長しました(HR=0.35、p<0.001)。全生存期間の中央値は、E群とP群で比較してHR= 1.05で有意差はありませんでした。

上記より、低悪性度あるいは中悪性度のP-NETに対して、Everolimusの有用性が証明されました。


(3) Everolimus + LAR vs Placebo + LAR:RADIENT-2

病理学的にlow gradeあるいはintermediate gradeであることを確認された進行性あるいは転移性NET(消化管)が対象とされました。429 例の患者が登録され、Everolimus + LAR群216例、プラセボ+LAR群213例に振り分けられました。主要評価項目は、無増悪生存期間(Progression Free Survival)でした。

両群とも約77-82%が高分化型、14-18%が中分化型の腫瘍でした。

臨床試験前に、E群の80%、プラセボ群の78%でソマトスタチンアナログ製剤の治療が施行されていました。

E群では、10mgが連日投与されました。

無増悪生存期間の中央値は、E+LAR群で16.4ヶ月、P+LAR群で11.3ヶ月となり有意にE群で延長しました(HR=0.77、p=0.026)。

サブセット解析では、以前にソマトスタチンアナログ製剤の投与を受けている症例では、無増悪生存期間の中央値は、E+LAR群で14.3ヶ月、P+LAR群で11.1ヶ月となり有意差はありませんでした(HR=0.81、p=0.077)。一方、以前にソマトスタチンアナログ製剤の投与を受けていない症例では、無増悪生存期間の中央値は、E+LAR群で25.2ヶ月、P+LAR群で13.6ヶ月となり有意差はありませんでしたが、E群で延長する傾向が認められました(HR=0.63、p=0.054)。


上記より、低あるいは中悪性度のNETに対して、Everolimus+LARの有用性が証明されました。

4-2 低分化型(NEC)に対する治療

すい臓NECに対しては、病理学的にあるいは臨床症状的に類似の小細胞肺癌の治療に準じて、白金製剤をベースにして多剤併用化学療法が施行されています。
新板橋クリニック腫瘍センター

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結腸・直腸がんのバイオマーカー
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Version 2012.01

背景

EGFR抗体を用いた治療は、とくに選別を行わない転移性結腸・直腸がん患者では、期待したような効果を得ることができませんでした。そのため、EGFR抗体の投与が有効な患者を選別する試みがなされました。選別の有効な候補として、EGFRの下流で細胞内に増殖シグナル(信号)を伝える経路が注目されています。Mitogen-activated Protein Kinase Pathways (MAPK)とPhosphoinositide 3-Kinase (PI3K)経路の2つが注目され、いくつかのbaiomarkersが有望視され、また新たな分子標的となる可能性がでてきています。

POINT
 KRAS
 BRAF
 EGFR
 Amphiregulin/Epiregulin
 IGF-1
 PIK3CA

A KRAS

POINT

 cetuximabやpanitumumabを投与する前には、KRASのチェックが必要である。KRAS野生型に投与することが推奨される。

 KRAS変異型には投与することは推奨されない。ただし、G13dについては、投与を考慮してもよい。

 codon 12/13のexon2の変異を調べます(保険適応)

 KRAS野生型であることが、CetuximabあるいはPanitumumabの治療効果予測因子(predictive marker)であること数多くの試験で示されました。

 MRC COIN試験はnegative dataであり、KRASについて今後の検討が必要です。

(1) FOLFIRI + cetuximab: the CRYSTAL trial, ASCO 2007 # 4000, ESMO 2009 #6078

未治療の転移性大腸癌の、1st lineの化学療法の評価をする無作為化第III相臨床試験(CRYSTAL試験)の結果が報告されました。

未治療の転移性大腸癌に対して、FOLFIRI + Cetuximab併用治療(609例)あるいはFOLFIRI単独治療(608例)が登録されました。解析可能なFOLFIRI単独群599例とFOLFIRI+cetuximab併用治療群599例では、全生存期間の中央値は18.6か月と19.9か月となりわずかに生存期間が延長する傾向になりました(HR=0.878, p=0.042)。無増悪生存期間中央値はFOLFIRI単独治療群で8か月、FOLFIRI + cetuximab併用治療群では、8.9カ月となり、有意に無増悪生存期間が延長しました(p=0.00479)。奏効率は、単独治療群が38.7%、併用治療群は46.9%でした(p=0.008)。

KRASの解析が行われた1063例では、KRAS野生型が666例(56%)で変異型が397例(44%)でした。KRASステータスで検討をすると、KRAS野生型666例では、全生存期間の中央値は、FOLFIRI単独群(350例)で20か月、FOLFIRI+cetuximab併用治療群(316例)で23.5か月となり有意に生存期間が延長しました(HR=0.796, p=0.0094)。無増悪生存期間の中央値は、単独群で8.4か月、併用治療群で9.9か月となり有意に無増悪生存期間が延長しました(HR=0.696, p=0.0012)。奏功率は、単独群で39.7%、併用治療群で57.3%となり有意に奏功率は向上していました。

PFS: 8.4か月→9.9か月
OS: 20か月→23.5か月

一方、KRAS変異型397例では、全生存期間の中央値は、FOLFIRI単独群(183例)で16.7か月、FOLFIRI+cetuximab併用治療群(214例)で16.2か月となり有意差は認めませんでした(HR=1.035, p=0.7551)。無増悪生存期間の中央値は、単独群で7.7か月、併用治療群で7.4か月となり有意差は認めませんでした(HR=1.171, p=0.2661)。奏功率は、単独群で36.1%、併用治療群で31.3%となり有意差は認めませんでした。

KRAS野生型では、初回治療でFOLFIRI+cetuximab併用治療が推奨されることがわかりました。

(2) FOLFOX4 + cetuximab: OPUS, a Phase II Study, ASCO # 4035 and ESMO 2009 # 6079

EGFR陽性の手術不能進行・再発結腸・直腸がんを対象に、FOLFOX4 + cetuximab併用治療群(169例)とFOLFOX4単独治療群(168例)を比較する無作為化第II相臨床試験が行なわれました。KRASの検討がなされ、KRAS野生型は179人(56.8%)に認められました。

1次治療としてどちらかの治療が行なわれ、奏効率は単独治療で36.7%、併用治療で45.6%、腫瘍制御率は単独治療で81%、併用治療で85.2%でした。

KRAS野生型179例で、FOLFOX4治療群(97例)とFOLFOX4+cetuximab併用治療群(82例)を比較すると、全生存期間の中央値は、18.5か月と22.8か月(HR=0.855, P=0.3854)、無増悪生存期間の中央値は7.2か月と8.3か月(HR=0.567, p=0.0064)、奏功率は34%と57.3%(p=0.0027)となり、無増悪生存期間と奏功率で有意差が認められました。

PFS: 7.2か月→8.3か月
OS: 18.5か月→22.8か月

一方KRAS変異型136例では、FOLFOX4治療群(59例)とFOLFOX4+cetuximab併用治療群(77例)を比較すると、全生存期間の中央値は、17.5か月と13.4か月、無増悪生存期間の中央値は8.6か月と5.5か月、奏功率は52.5%と33.8%となり、有意差は認められませんでした。

奏効率は、皮膚の有害事象と相関し、grade 0の患者では奏効率は13%、grade 3-4の患者では奏効率は66.7%となりました。

KRAS野生型vs 変異型
OS: 22.8か月 vs 13.4か月

(3) meta-analysis of the CRYSTAL and OPUS studies: ASCO2010 #3506

上記のCRYSTAL試験とOPUS試験を合わせたメタ解析が報告されました。2つの試験で、KRAS野生型であった患者は845例でした(CRYSTAL試験666例、OPUS試験179例)。
メタ解析では、無増悪生存期間は、化学療法単独群(FOLFIRI or FOLFOX4)と化学療法にcetuximabを併用した群を比較すると、34%増悪リスクを減少させることがわかりました(HR=0.66, p=0.0062)。全生存期間は、単独群と比較すると併用治療群は、19%死亡リスクを減少させることがわかりました(HR=0.81, P=0.0001)。奏功率は、単独治療群と比較して、併用治療群は2.16倍向上することがわかりました(odds=2.16)。


メタ解析の結果から、KRAS野生型の患者では、初回治療として、oxaliplatin-basedあるいはCPT-11 basedの化学療法にcetuximabを併用することが推奨されることがわかりました。

また、KRAS変異のうち、コドン13の変異について検討されました。コドン13変異の患者は、他の変異(特にコドン12)と比較して、PFSやOSが短縮しており、予後因子(Prognostic Marker)であることがわかりました。また、コドン13変異の患者にCmabを併用することで、PFS(化学療法群6.0ヶ月、併用群7.4ヶ月)とOS(化学療法群14.7ヶ月、併用群15.4ヶ月)が改善する傾向があることがわかりました。

(4) MRC COIN試験: mFOLFOX6 (or XELOX) vs mFOLFOX6 (or XELOX) + cetuximab

進行結腸・直腸がんを対象にして、初回治療としてoxaliplatinを含んだ化学療法(mFOLFOX6 or XELOX)あるいはmFOLFOX6 or XELOX療法にcetuximabを併用する化学療法を比較検討する第3相臨床試験が報告されました。

mFOLFOX6 or XELOX療法群(化学療法単独群)は815例、mFOLFOX6 or XELOX + cetuximab療法(併用群)も815例登録されました。術後補助化学療法未施行例が約70%、登録症例の約30%が直腸がんでした。化学療法は、XELOXが約66%、mFOLFOX6が約34%でした。KRAS変異型が約42%でした。

1次エンドポイントは、KRAS野生型で、併用治療群が単独治療群と比較して全生存期間が延長していることを証明すること(優越性の証明)、2次エンドポイントは、全生存期間や奏功率などでした。

KRAS野生型は、単独群で367例(mFOLFOX6で127例、XELOXで240例)、併用治療群で362例(mFOLFOX6で117例、XELOXで245例)でした。

KRAS野生型で全生存期間は、単独治療群で17.9か月、併用治療群で17.0か月で優越性を証明できませんでした(HR=1.038, p=0.68)。レジメン別に見てみると、XELOX療法、mFOLFOX6療法どちらでも、単独治療と併用治療群で無増悪生存期間に有意差は認められませんでした。

KRAS野生型で、cetuximabの上乗せ効果が証明されなかった報告です。今後この結果をどのように解釈するかが問題になります。

(5) PRIME試験:FOLFOX4 vs FOLFOX4 + Pmab

転移・再発結腸・直腸がんを対象に、初回治療として、FOLFOX4療法単独あるいはFOLFOX4療法+Pmab併用療法を比較して、Pmbの上乗せ効果をみる第3相臨床試験が行われました。中途でKRASの解析が追加され、KRAS野生型の腫瘍での比較検討にプロトコールが修正されました。
1次エンドポイントはKRAS野生型腫瘍での無増悪生存期間を比較して優越性を証明すること、2次エンドポイントは全生存期間、奏功率などでした。
1183例の患者が登録され、FOLFOX4 + Pmab併用群が593例、FOLFOX4単独群が590例となりました。KRAS野生型がそれぞれ60%の患者に認められました。KRAS野生型の患者では、併用治療群は325例、単独治療群は331例となりました。
無増悪生存期間の中央値は、併用治療群(Pmab群)で9.6か月、単独治療群で8.0か月となり(HR=0.80, p=0.02)優越性が証明されました。
全生存期間の中央値は併用治療群では到達せず、単独治療群で18.8か月となり(HR=0.83, p=0.16)、併用治療の優越性は証明されませんでした。
奏功率は、併用治療群で55%、単独治療群で48%となりました。

PFS: 8.0か月→9.6か月
OS: 18.8か月→到達せず
奏功率: 48%→55%

(6) FOLFIRI + Pmab (20060314 study): ESMO 2009

手術不能転移・再発結腸・直腸がんに、1次治療でのPmabの併用効果をみる第2相臨床試験の中間結果が報告されました。
154例が登録され、147例でKRASの解析が行われました。85例(60%)がKRAS野生型、57例(40%)がKRAS変異型でした。変異型群は野生型群と比較して結腸がんが多い傾向(67% vs 59%)でした。
奏功率は、KRAS野生型で47.6%、変異型で28.6%、腫瘍制御率は、野生型で90%、変異型で88%でした。


(7) FOLFIRI vs FOLFIRI + Pmab: 20050181試験

転移・再発結腸・直腸がんを対象に、2次治療として、FOLFIRI療法単独あるいはFOLFIRI療法+Pmab併用療法を比較して、Pmbの上乗せ効果をみる第3相臨床試験が行われました。中途でKRASの解析が追加され、KRAS野生型の腫瘍での比較検討にプロトコールが修正されました。
1次エンドポイントはKRAS野生型腫瘍での無増悪生存期間を比較して優越性を証明すること、2次エンドポイントは全生存期間、奏功率などでした。
1186例の患者が登録され、FOLFIRI + Pmab併用群が591例、FOLFIRI単独群が595例となりました。KRAS野生型がそれぞれ56%, 54%の患者に認められました。KRAS野生型の患者では、併用治療群は303例、単独治療群は294例となりました。
無増悪生存期間の中央値は、併用治療群(Pmab群)で5.9か月、単独治療群で3.9か月となり(HR=0.73, p=0.004)優越性が証明されました。
全生存期間の中央値は併用治療群で14.5カ月、単独治療群で12.5か月となり(HR=0.85, p=0.12)、併用治療の優越性は証明されませんでした。
奏功率は、併用治療群で35%、単独治療群で10%となりました。

PFS: 3.9か月→5.9か月
OS: 12.5か月→14.5か月
奏功率: 10%→35%

(8) PRECEPT試験(FOLFIRI + panitumumab): ESMO 2009 6.083

米国で手術不能転移・再発結腸・直腸がんを対象にFOLFIRI + Panitumumabの第2相臨床試験が行われました。109例の患者が登録され、64例がKRAS野生型(59%)、45例がKRAS変異型(41%)でした。KRAS野生型で結腸がんが70%(直腸がんが30%)、変異型で60%で野生型で結腸がんが多い傾向になりました。腫瘍の増大(PD)が原因で治療を中止した患者が約80%程度、副作用で治療を中止した患者が20%弱でした。
2次治療で、奏功率は、KRAS野生型で15例(23%)、変異型で7例(16%)でした。無増悪生存期間の中央値は、野生型で26週、変異型で19週、全生存期間の中央値は、野生型で50週、変異型で31週(HR=0.6, 95% CI 0.4-0.9)となりました。
2次治療でもKRAS野生型と変異型を比較すると、野生型でpanitumumabの効果が向上することが示唆されました。

(9) Amadoらの報告(JCO 26: 1626)

463例の登録患者中427例(BSC群219例、Panitumumab群208例)でKRASが解析されました。KRASの変異は約43%に認められ、KRAS野生型(WT)では変異型(mut)と比較して有意に無増悪生存期間(PFS)が延長していました(HR=0.45, p<0.0001)。KRAS WTでは、PFSの中央値はpanitumumab群で12.3週、BSC群で7.3週でした。奏功率はそれぞれ17%と0%でした。Mutではpanitumumab治療に反応せず効果が得られないことがわかりました。

コメント

多数の臨床試験で、KRAS statusの違い(野生型 vs 変異型)が、oxaliplatin basedあるいはCPT-11 based化学療法にCetuximab/ or Pmabを併用して上乗せ効果が得られるかどうかの効果予測因子になることが報告されています。KRAS野生型でCmab/ Pmabを投与することが推奨されるのは、コンセンサスをほぼ得ていますが、MRC COIN試験のようなnegative dataがあること、他の臓器のがんで同様のストーリが成立するかを見守る必要があります。

B EGFR

POINT
 EGFRの染色強度とCmab/ Pmabの治療効果は相関しない。

 免疫染色法の感度の問題で、EGFR染色の有無では治療効果は予測できない

(1) BOND study (NEJM 351: 337)
CPT-11あるいはオキサリプラチンを含んだ化学療法で、治療効果の認められなくなった患者(329例)を対象にして、サルベージ治療(2nd line or 3rd line)としてエルビタックス単独治療(111例)あるいはエルビタックスとCPT-11の併用治療(218例)を行い、腫瘍縮小効果が得られるかどうかが検討されました。エルビタックス単独治療(111例)では、10.8%で腫瘍縮小効果(奏功率)が認められ、腫瘍が増殖するまでの期間(TTP)は1.5ヶ月でした。エルビタックスとCPT-11の併用治療(218例)では、22.9%で腫瘍縮小効果が認められ、TTPは4.1ヶ月でした。つまりエルビタックスとCPT-11の併用療法をサルベージ治療として行うと、エルビタックス単独治療より有意に奏功率とTTPが延長することがわかりました。
EGFRの発現は免疫染色(IHC)にて検索されましたが、発現の有無と奏功率は相関しませんでした。

コメント

他の臨床試験も、EGFRの染色強度とCmab/Pmabの治療効果には相関が認められていない。免疫染色の精度の問題があると思われる。つまり、EGFR発現の有無でCmabやPmabの投与を決定してはならないことがわかりました。

C BRAF

 BRAF変異の有無で予後が予測できる可能性がある

 BRAF変異型と野生型を比較すると、変異型で予後が悪化する。

 BRAF変異型であっても、KRAS野生型であれば、Pmab/Cmabの効果は期待できる。

(1) JCO 26:5705

Cetuximabあるいはpanitumumab治療を受けた113例の患者で、レトロスペクティブにKRASとBRAFの解析が行われた。KRAS変異型は34例(30%)、BRAF変異は11例、KRASとBRAFがともに野生型は68例(60%)であった。
BRAF変異型では治療に奏功した患者はいなかった。逆に治療に奏功した患者にはBRAF変異型はいなかった。また、BRAF変異型は野生型と比較して、有意に無増悪生存期間や全生存期間が短かくなりました。

(2) ASCO 2010: E. V. Cutsem # 3570

CRYSTAL試験において、KRASあるいはBRAFの遺伝子変異ごとの治療成績の違いが報告されました。1st lineでKRAS野生型666例で、FOLFIRI療法を受けた群(350人)あるいはFOLFIRI+Cmab療法を受けた群(316人)で、BRAFの変異の有無で全生存期間や無増悪生存期間、奏功率に違いがあるかが検討されました。

KRAS野生型666例では、FOLFIRI群(350例)とFOLFIRI+Cmab群(316例)を比較すると、全生存期間の中央値は、20.0か月、23.5か月(HR= 0.796、p=0.0093)となり、無増悪生存期間の中央値は、8.4か月、9.9か月(HR= 0.696、p=0.0012)奏功率は39.7%、57.3%となりました。

KRAS野生型でかつBRAF野生型566例では、FOLFIRI群(289例)とFOLFIRI+Cmab群(277例)では、全生存期間の中央値は、21.6か月、25.1か月となり、無増悪生存期間の中央値は、8.8か月、10.9か月、奏功率は42.6%、61.0%となりました。

一方、KRAS野生型かつBRAF変異型59例では、FOLFIRI群(33例)とFOLFIRI+Cmab群(26例)では、全生存期間の中央値は、10.3か月、14.1か月となり、無増悪生存期間の中央値は、5.6か月、8.0か月、奏功率は15.2%、19.2%となりました。

BRAF野生型と比較してBRAF変異型では、予後が悪いことがわかり、予後予測因子である可能性が示されました。一方BRAFはCmabの効果予測因子とはならないことが示されました。なぜなら、BRAF変異型であっても野生型であっても、KRAS野生型であれば、Cmabの上乗せ効果が認められるからです。

(3) Meta analysis (CRYSTAL and OPUS): 2010 ASCO # 3506

CRYSTAL試験とOPUS試験のメタ解析において、KRASあるいはBRAFの遺伝子変異ごとの治療成績の違いが報告されました。

KRAS野生型は845例で、そのうち800例でBRAFの解析が行われました。

1st lineにおいて、KRAS野生型でFOLOFIRI療法あるいはFOLFOX療法を施行した群(CT群)とCmabを併用した群(併用群)を比較すると、無増悪生存期間の中央値は、それぞれ7.6ヶ月、9.6ヶ月、(HR=0.66、P<0.0001)、全生存期間の中央値は、それぞれ19.5ヶ月、23.5ヶ月(HR= 0.81、p=0.0062)となりました。

KRAS野生型かつBRAF野生型で、CT群と併用群を比較すると、無増悪生存期間の中央値は、それぞれ7.7ヶ月、10.9ヶ月(HR=0.64、p<0.001)、全生存期間の中央値は、21.1ヶ月と24.8カ月(HR= 0.84,p=0.041)となりました。

KRAS野生型かつBRAF変異型では、CT群と併用群を比較すると、無増悪生存期間の中央値は、3.7ヶ月と7.1ヶ月(HR=0.69 、p=0.267)、全生存期間の中央値は、9.9ヶ月と14.1カ月(HR= 0.63、p=0.079)となりました。

メタ解析の結果から、KRAS野生型の患者では、Cmabの併用で生存期間が有意に延長すること、Cmabの効果はBRAF変異の有無に左右されないことがわかりました。また、BRAF変異型は、転移性結腸・直腸がんに対する予後予測因子になることがわかりました。

D Amphiregulin/Epiregulin

 Amphregulin/EpiregulinはEGFRのリガンドである。

 KRAS野生型では、AREG/EREG mRNAが腫瘍内で発現している(high level)ほど、Cmabの治療効果が高くなる(治療効果予測因子)。

(1) JCO 27:5068-5074

CPT-11に抵抗性を示した220例の転移性結腸・直腸がんを対象に、KRAS statusとAREG/EREG ligand statusとCPT-11 + Cmabの治療効果に相関があるかどうかの検討がなされました。

212例でKRAS statusが解析され、91例(43%)がKRAS変異型、121例(57%)がKRAS野生型でした。

KRAS野生型では、AREG/EREGの発現が高いものと低いものを比較すると、奏功率、無増悪生存期間、全生存期間すべて有意差をもって、発現が高いほうが向上することがわかりました。
KRAS変異型では、AREG/EREGと治療効果には相関は認められませんでした。

コメント

CPT-11+Cmab治療を受けた患者のretrospectiveな解析となるため、結果の解釈には、prospectiveな試験の結果が必要です。

新板橋クリニック腫瘍センター

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