プロフィール

Author:新板橋クリニック
平成18年4月1日東京都板橋区、都営地下鉄三田線新板橋駅より徒歩1分に、清水公一を院長として、新板橋クリニックを開設いたしました。
消化器・胃腸科、外科を中心に、一般内科、肛門科を診療いたします。生活習慣病(糖尿病、高血圧、高脂血症など)の診療を行い、身近なかかりつけ医(ホームドクター)として、また予防医学にも力を入れ、温かくわかり易い診療で近隣の皆さん方のお役に立てるように努力して参りたいと思っております。
がん治療(早期発見・診断、手術、化学療法、緩和医療)に長く従事していたことから、がん集学的治療を行う腫瘍センター(オンコロジーセンター)を併設いたしました。
また人間ドック、消化器がん専門ドックなどにも力をいれております。
検査設備としては、上部内視鏡検査(咽頭・喉頭・食道・胃・十二指腸)及び下部内視鏡検査(大腸)(いわゆる胃カメラ・大腸カメラ)、レントゲン透視、超音波検査(エコー検査)、心電図等充実させております。
院長や医師の豊富な経験をもとに、近年ご要望の多いセカンドオピニオン等のがん医療相談も予約制で行っておりますのでご相談ください。

医療理念

医者と患者という人間同士が、健康・病気を相談しながら共同で診ていくことを目指します。人を思いやり、安心と満足をもたらし、心身共に幸せにできる医療を目指して行きたいと思っています。

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進行・再発胃がんの化学療法ガイド
手術不能進行・再発胃がんの化学療法
新板橋クリニック

手術不能進行・再発胃がんの化学療法
Version 2012.01


1 背景

手術不能あるいは転移・再発胃癌の患者では、症状緩和治療単独群の全生存期間の中央値は4か月程度、一方無作為化比較試験あるいはメタアナリシスでの検討では全身化学療法群の全生存期間の中央値は約8か月で、有意に生存が延長することが示されています。つまり、全身化学療法を受けることが推奨されます。

世界的に1st line治療として広くコンセンサスが得られている治療はありません。しかし、日本では2つの第III相無作為化比較臨床試験が発表されたことから、初回治療(1st line)の標準的療法としてTS-1単独治療あるいはTS-1+CDDP治療が推奨されます。

2 1st line (初回化学療法)

2-1 過去

POINT
●FU単独治療、FP(CF)療法などが日本では推奨されていました。
●エビデンスがない状態でTS-1を含んだ化学療法がおこなわれていました。

① 5-FU単独治療
JCOG9205の成績では、5-FU単独治療で奏効率は11.4%、50%生存期間は7.1ヶ月でした。一方、5-FU + CDDP (CF)療法は、奏効率は34.3%でしたが、50%生存期間は7.4ヶ月であり、5-FU単独治療と比較して生存期間の延長は認められませんでした。日本では、5-FU単独治療が、薬剤の効果を調べる比較試験の対象となっていました。

② 5-FU + CDDP (CF)療法
上記のごとく、JCOG9205では、奏効率では5-FU単独治療を上回っているものの、生存期間の延長は認められませんでした。一方、副作用は増加しています。米国では、標準的治療として行われています。

③ ECF
Epirubicin 50 mg/m2, cisplatin 60 mg/m2, infusional 5-FU 200 mg/m2は、EUでは、1st line治療として汎用されています。奏効率は45%、50%生存期間は8.9ヶ月と報告されています。

④ DCF: Phase III trial, V325試験
5-FU + CDDP + Docetaxelを併用した治療(DCF療法)がCF療法と比較され、奏効率はDCFが37%、CFが25%、腫瘍が増殖するまでの期間はDCFが5.6ヶ月、CFが3.7ヶ月、2年生存率がDCFは18%、CFは9%でした。全生存期間の中央値はDCFが9.2カ月、CFが8.6カ月でした。CF療法を始めて無作為化比較試験で上回った治療法の報告で、DCFは米国のFDAに承認され標準的治療として行われています。

2-2 現在

POINT
● TS-1単独治療が推奨される。
● TS-1+CDDP療法はTS-1単独治療を上回る治療効果が第III相臨床試験で報告されたことから、より推奨される。
● CDDP以外の化学療法薬(CPT-11やtaxaneなど)がTS-1を併用されていますが、その効果についての明確なエビデンスはまだありません。
● Her2陽性胃がん(Her2 2+/FISH陽性あるいはHER2 3+)では、herceptinを併用することが推奨されます。
● BVの上乗せ効果は否定されています。
● CDDPをoxaliplatinで置き換えることを考慮してもいい

日本では、TS-1が保険適応となっており、手術不能進行胃癌あるいは転移・再発胃癌に対してTS-1単独あるいはTS-1 + CDDP(あるいはCPT-11, taxanes)の併用投与が第1選択の治療として広く行われています。2007年のASCOにてTS-1単独治療あるいはTS-1+CDDP併用治療のエビデンスが報告され、今後ますます使用頻度が増すと考えられます。今後の課題は、2nd line以降あるいは、TS-1抵抗性となった症例に対しての治療法の開発になります。

2-2-1 TS-1を含んだ化学療法

(1) TS-1単独治療: JCOG 9912試験、ASCO 2009, abstract #4514
手術不能進行・再発胃がんに対して、初回治療として、5-FU単独治療、CPT-11 + CDDP療法(CP)、S-1単独治療の効果を比較する第III相無作為化比較臨床試験が行なわれました。5-FU単独治療を標準的治療として比較を行い、CP療法の優越性(5-FUより優れた治療であるかどうか)と、TS-1の非劣性(5-FUと比較して劣っていないか?つまり代替として使ってよいか?)が検討されました。
無増悪生存期間は、5-FU単独治療が、2.9ヶ月、CPT-11 + CDDP治療が4.8ヶ月(ハザード比が0.69, p値<0.001)、S-1単独治療が、4.2ヶ月(ハザード比が0.75, P値<0.0001)となり、2つの治療は5-FUと比較して有意に無増悪生存期間が延長していました。全生存期間の中央値は、5-FU単独が10.8ヶ月、CPT-11 + CDDPが12.3ヶ月(ハザード比は0.85、p値は0.05)、S-1単独が、11.4ヶ月(ハザード比は0.83、p値は非劣性として<0.001)となり、CPT-11 + CDDPの優越性は否定されました。S-1の非劣性は証明され、今後、初回治療として、5-FU単独治療と同様にS-1治療が推奨されることがわかりました。また、CPT-11 + CDDP治療は、病気の進行ではなく副作用のため投与を中止する例が30%程度存在するため、初回治療としては、推奨されないことが確認されました。

(2) TS-1 + CDDP療法: SPIRITS 試験
2007 ASCOにて報告されました。手術不能進行・再発胃癌に対して、初回治
療としてS-1単独治療とS-1+CDDP併用治療の効果を比較する第III相無作
為化比較臨床試験が行なわれ、S-1単独治療を標準的治療として、S-1 + CDDP
併用治療の優越性が検討されました。
無増悪生存期間は、S-1単独治療が、4ヶ月、S-1 + CDDP治療が6ヶ月(ハザード比が0.567, p値<0.001)となり、S-1 + CDDP併用治療はS-1単独治療と比較して有意に無増悪生存期間が延長していました。全生存期間の中央値は、S-1単独治療が11ヶ月、S-1 + CDDPが13ヶ月(ハザード比は0.774、p値は0.03)となり、S-1 + CDDP併用治療がS-1単独治療と比較して有意に2カ月間生存期間を延長させることがわかりました。2年生存率は、S-1単独治療が15.3%、S-1 + CDDP併用治療が23.6%でした。中間解析ではありますが、手術不能進行・再発胃癌の初回治療は、S-1 + CDDP治療が推奨されることがわかりました。

2007ASCOで日本から発表された2つの臨床試験の結果から、今後、初回治療は、S-1 + CDDPもしくは、S-1治療が推奨されることが明らかになりました。今まで、S-1を中心とした治療が臨床現場では、汎用されていましたが、エビデンスが作られたことになります。

(3) TS-1 + CPT-11: GC0301/TOP-002 2009 ASCO abstract #4544

2009 ASCOにてfollow upが報告されました。手術不能進行・再発胃がんを対象に、1st line (初回治療)としてTS-1 + CPT-11あるいはTS-1単独治療を比較する第III相無作為化比較臨床試験が行われました。
中間報告ですが、TS-1単独治療群160例、TS-1 + CPT-11併用治療群155例が解析され、奏功率は単独治療群が26.9%、併用治療群が41.5%で、併用治療群で奏功率が高かったものの(p=0.035)、腫瘍増殖までの期間(TTF)は単独治療群で3.6か月、併用治療群で4.5か月で優位差はありませんでした(p=0.1565)。また、生存期間の中央値(MST)は、単独治療群で10.5か月、併用治療群で12.8か月となり優位差はありませんでした(p=0.5361)。つまり、中間報告の段階では、TS-1 + CPT併用治療はTS-1と比較して優越性を証明できませんでした。
優位差を証明するには、症例数が少ないのではないか(underpower)、2nd line以降でTS-1を含むいろいろな治療が行われており、生存期間の解析に影響を与えているのではないか、follow up期間が短すぎるため生存期間に優位差がでないのではないか、などが現状での問題点とされ、follow upデータの結果が検討されましたが、結論に違いはないようです。

(4) TS-1を使用した他の併用化学療法
TS-1 + paclitaxel
TS-1 + docetaxel

OGSG0402試験:ASCO2010

進行胃がんに対して、初回治療(1st line)で、S-1+CPT-11療法とS-1+Paclitaxel療法を比較した無作為化第II相臨床試験が行われました。
対象は、組織学的に腺癌と診断された切除不能または測定可能病変のある再発胃がんで、補助化学療法以外の化学療法歴のない症例でした。

S-1+CPT-11群:S-1 80mg/m2/日、21日間投与、CPT-11 80mg/m2、1,15日目投与(5週間毎)
S-1+Paclitaxel群:S-1 80mg/m2/日、14日間投与、Paclitaxel 50mg/m2、1,8日目投与(3週間毎)

主要評価項目は奏功率、副次的評価項目は無増悪生存期間と全生存期間でした。S-1+CPT-11群51例、S-1+Paclitaxel群51例が登録され、奏功率は、37.3%と35.3%、無増悪生存期間の中央値は、173日と141日、全生存期間の中央値は、379日と364日でした。いずれも両群間で有意な差はありませんでした。
両群とも、期待奏功率の50%を下回っており、また、全生存期間は、S-1単独療法あるいはS-1+CDDP療法を上回る結果が出ていませんでした。

(5) SC-101試験:ASCO 2008#4533
中国で、進行胃がんに対する第III相無作為化比較臨床試験が行われており、その経過が報告された。手術不能進行・再発胃がんを対象に、TS-1単独治療群(S-1群)、TS-1+CDDP治療群(SP群)、FU+CDDP治療群(FP群)の3つの治療法の効果が比較検討されました。S-1単独群が77例、SP群が74例、FP群が73例で解析が行われ、奏功率はそれぞれ、24.7%、37.8%、19.2%となりSP群はFP群と比較して優位に奏功率が高くなりました(p=0.021)。治療が効かなくなるまでの期間は、S-1群、SP群、FP群でそれぞれ126日、159日、85日となりSP群はFP群と比較して優位に治療が効かなくなるまでの期間が延長していました(p<0.001)。全生存期間の中央値はS-1群、SP群、FP群で、それぞれ267日、433日、309日となりSP群では優位にS-1単独群より生存期間が延長していました(p<0.001)。

以上のことから、S-1+CDDP(SP)療法は、進行胃がんの初回治療としてアジアでは推奨されることがわかりました。

(6) FLAGS試験: JCO 28: 1547

Ajaniらが手術不能進行胃がんを対象に、TS-1+CDDP(CS)療法と5-FU+CDDP(CF)療法を比較する無作為化第III相臨床試験の結果を報告しました。

S-1 50 mg/m2, 2 x/day for 21 days
CDDP at 75 mg/m2 IV on day 1
Repeated every 28 days

Infusional FU at 1000 mg/m2/24 hrs for 120 hrs
CDDP at 100 mg/m2 IV on day 1
Repeated every 28 days

1053例の患者が登録され、1029例の患者がCF群(508例)とCS群(521例)で比較検討されました。主要評価項目は全生存期間、副次評価項目は無増悪生存期間、安全性、奏功率などでした。CSのCFに対する「優越性」を検討することが目的でした。
胃がんの患者は、CS群で84.1%、CF群で82.1%、食道・胃境界がんは、CS群で15.7%、CF群で17.3%でした。

全生存期間の中央値は、CS群で8.6か月、CF群で7.9か月(HR=0.92, p=0.1983)、無増悪生存期間の中央値は、CS群で4.8か月、CF群で5.5か月(p=0.9158)、奏功率はCS群で29.1%、CF群で31.9%となりCS群はCF群と比較して優越性を証明できませんでした。2009 ASCOでは、非劣性解析の結果を報告し(unplanned)、CS療法はCF療法と比較して非劣性であると論じていました。また、びまん型の症例では、全生存期間の中央値はCS群で9.0か月、CF群で7.1か月となり、CS群で有意に延長が認められました(p=0.0413、HR=0.83)。

(7) TS-1 + oxaliplati: G-SOX療法: An of Oncol 2009

Oxaliplatin: 100 mg/m2 on day1
S-1 80 mg/m2 oral on days 1-14
Q3W

第2相臨床試験が報告されました。手術不能進行胃がん、あるいは転移・再発胃がんの患者55例が登録され、51例が解析されました。奏功率は59%、主要制御率は71%、全生存期間の中央値は16.5か月、無増悪生存期間の中央値は6.5か月、1年生存率は71%でした。

(8) TS-1+docetaxel vs S-1 alone: START試験

手術不能進行胃がんを対象に、TS-1+Docetaxel併用療法とS-1単独療法を比較する無作為化第III相臨床試験の結果が報告されました。

S-1:40mg/m2、BID、d1-14、Docetaxel:40mg/m2、d1、q3w
S-1単独:40mg/m2、d1-28、q6w

主要評価項目は全生存期間、副次的評価項目は無増悪生存期間、奏功率などでした。

639例が登録され、併用治療群が310例、単独治療が313例、割り付けされ治療を受けました。全生存期間の中央値は、併用治療群で390日、単独治療で334日となり、有意差はありませんでした(HR=0.88、p=0.1416)。併用治療群と単独治療で、1年生存率は52.5%と46%、2年生存率は23.7%と20.6%、3年生存率は13%と12.3%でした。

腫瘍が増悪するまでの期間は、併用治療群で161日、単独治療で126日となり、併用治療群で有意に延長していました(HR=0.74、p=0.0004)。

測定可能病変を有する症例の奏功率は、併用治療群で30.3%、単独治療で18.4%となり、有意に併用治療群で上回っていました(p=0.0004)。

サブセット解析では、測定可能病変を有さない進行胃がん例で全生存期間を検討すると、併用治療群は524日、単独治療は350日であり、併用治療群で有意に生存期間が延長していました。(HR=0.674、p=0.0389)。

上記の結果から、S-1+Docetaxelは、S-1単独治療と比較して優越性を証明できませんでした。


(9) TS-1治療のまとめ
日本ではTS-1を中心に治療が行われています。治療効果をまとめると

無増悪生存期間の中央値は、

JCOG9912ではTS-1単独は4.2ヵ月、
SPIRITS試験ではTS-1単独は4ヵ月、TS-1+CDDP(CS)は6ヵ月
GC0301では、TS-1単独は3.6ヶ月、TS-1+CPT-11は4.5ヶ月
START試験では、TS-1単独は126日(4ヶ月)、TS-1+Doceは161日(5.3ヶ月)

全生存期間の中央値は、

JCOG9912ではTS-1単独は11.4か月
SPIRITS試験ではTS-1単独は11ヵ月、TS-1+CDDP(CS)は13ヵ月
TOP-002では、TS-1単独は10.5か月、TS-1+CPT-11は12.8か月
STARTでは、TS-1単独は11.0か月、TS-1+Docetaxelは13.0か月

となります。
現状では、TS-1を含んだ化学療法を行うことで、無増悪生存期間は、4から6か月程度、全生存期間は12-13か月程度が見込まれます。


2-2-2 Capecitabineを含んだ化学療法

POINT
●EUではcapecitabineが胃がんに対する経口FU剤として認められています。
●capecitabine + CDDPあるいはcapecitabine + CDDP + epirubicinが欧州では標準的治療として行われています。
● HER2強陽性(Her2 2+かつFISH陽性あるいはHER2 3+)胃がんでは、capecitabine + CDDPにherceptinを併用することが推奨されます。
● BVの上乗せ効果は否定されています。

(1) 海外では、capecitabineは胃がんに対する主たる化学療法薬剤となってきました。2つの臨床試験では、手術不能進行胃癌あるいは転移・再発胃癌を対象に、カペシタビン単独の投与で、奏効率が34%あるいは19%と報告されています。

(2) REAL-2試験と呼ばれる第III相無作為化比較試験が行われました。英国で標準的治療とされるECF療法と比較して非劣性を証明するための試験でした。1002例の進行胃癌の患者を対象にして、ECF療法(epirubicin + cisplatin + infusional 5-FU)、ECF療法のうち5-FUをcapecitabine (625 mg/m2 twice daily)に置き換えた療法(ECX療法)、EOX療法(epirubicin + oxaliplatin + capecitabine)、EOF療法(epirubicin + oxaliplatin + infusional 5-FU)の4つの療法が比較されました。奏効率はECFで41%、EOFで42%、ECXで46%、EOXで48%でした。Capecitabineを含んだECXとEOX群では、5-FUを含んだECFとEOF群と比較して有意に全生存期間の延長が認められました。つまり、infusional 5-FUをcapecitabineに置き換えても、生存期間は劣らないことが証明されました。

(3) 別の、無作為化試験(これも非劣性試験です)では、XP療法(cisplatin + capecitabine)とFP療法( infusional 5-FU + cisplatin)が比較されました。無増悪生存期間(PFS)は、XP療法で5.6ヶ月、FP療法で5.0ヶ月、全生存期間はXP療法で10.5ヶ月、FP療法で9.3ヶ月でした。つまり、この臨床試験でも、infusional 5-FUをcapecitabineに置き換えても効果は劣らないことが証明されました。

以上の2つの臨床試験の結果から、欧州委員会はcapecitabineと白金系抗癌剤の併用療法を進行胃癌のfirst line治療として承認しました。

(4) Capecitabine + docetaxel
3つの第II相臨床試験(無作為化試験ではない)が行なわれ、奏効率は39、40、44%、無増悪生存期間は、4.2ヶ月から5ヶ月、全生存期間は、8.4ヶ月から12ヶ月と報告されています。

(5) 5-FU or capecitabine + cisplatin + herceptin: ToGA trial、ASCO 2009, abstract #4509
HER2陽性でかつ手術不能進行・再発胃がんあるいは胃・食道接合部がんに対して、初回治療として、化学療法単独群(C群)と化学療法とHerceptinを併用する群(C+H群)の効果を比較する第III相無作為化比較臨床試験が行なわれました。C群は5-FUあるいはcapecitabineにcisplatinを併用する治療で、この治療を標準的治療としてC+H群の優越性が比較検討されました。Herceptinは腫瘍の増悪までは投与され、主要評価項目は全生存期間、副次評価項目は、無増悪生存期間、奏功率などでした。患者背景は、両群ともIntestinal typeが約75%、diffuse typeが約9%、mixed typeが約15%の比率で、アジア系が約50%、ヨーロッパ系が約30%の比率でした。胃切除後は約23%、胃がんは80%強、胃・食道接合部がんは20%弱、capecitabineの投与が87%程度でした。

Capecitabine: 1000mg/m2 bid day 1-14 q3W x 6
5-FU: 800 mg/m2/day continuous IV infusion day 1-5 q3W x 6
Cisplatin: 80 mg/m2 q3W x 6
Trastuzumab: 8 mg/kg loading dose followed by 6 mg/kg q3W until PD

3807例が登録され、HER2陽性は810例(22.1%)でした。810例中584例がC群(290例)とC+H群(294例)に振り分けられました。無増悪生存期間の中央値は、C群が、5.5ヶ月、C+H群が6.7ヶ月(ハザード比が0.71, p値???)となりました。全生存期間の中央値は、C群が11.1ヶ月、C+H群が13.8ヶ月(ハザード比は0.74、p値は0.0046)となり、C+H群の優越性が証明されました。奏功率はC群が34.5%、C+H群は47.3%でした。また、特にHER2 2+/FISH陽性あるいはHER2 3+では、全生存期間の中央値は、C群で11.8カ月、C+H群で16.0カ月(ハザード比0.65、p値???)となり、いわゆるHER2強陽性でHerceptinの併用効果が高いことがわかりました。

(6) capecitabine + cisplatin + bevacizumab: AVAGAST trial、JCO 29:3968

手術不能進行・再発胃がんあるいは胃・食道接合部がんに対して、初回治療として、化学療法単独群(C群)と化学療法とbevacizumab (BV)を併用する群(C+B群)の効果を比較する第III相無作為化比較臨床試験が行なわれました。C群はcapecitabineにcisplatinを併用する治療で、この治療を標準的治療としてC + B群の優越性が比較検討されました。Bevacizumabは腫瘍の増悪までは投与され、主要評価項目は全生存期間、副次評価項目は、無増悪生存期間、奏功率などでした。

774例が登録され、C群は387例、C+B群は387例、アジア、欧州、北中南米がそれぞれ49%、32%、19%でした。 患者背景は、両群ともIntestinal typeが約75%、diffuse typeが約9%、mixed typeが約15%の比率で、アジア系が約50%、ヨーロッパ系が約30%の比率でした。胃切除後は約23%、胃がんは80%強、胃・食道接合部がんは20%弱、capecitabineの投与が87%程度でした。

Capecitabine: 1000mg/m2 bid day 1-14 q3W until PD
Cisplatin: 80 mg/m2 day1 q3W maximum x 6
Bevacizumab: 7.5 mg/kg q3W until PD

774例が登録され、C群は387例とC+B群387例に振り分けられました。無増悪生存期間の中央値は、C群が、5.3ヶ月、C+B群が6.7ヶ月(ハザード比が0.80, p=0.0037)となりました。全生存期間の中央値は、C群が10.1ヶ月、C+B 群が12.1ヶ月(ハザード比は0.87、p値は0.1002)となりました。奏功率はC群が37.4%、C+B群は46%(p=0.0315)でした。無増悪生存期間と奏功率ではC+B群が有意に優れていました。しかし、主要評価項目の全生存期間では、C群とC+B 群で有意差がなく、優越性は証明できませんでした。
サブグループ解析で、2次治療についてみてみると、アジアでは66%、欧州では31%、北中南米では21%が2次治療を受けていました。全生存期間も、BVの併用をすることで、欧州や北中南米では上乗せが高く、アジアでは低い傾向になりました。

2-2-3 他の薬剤

(1) Taxanes (paclitaxel or docetaxel)
単剤での奏効率は15から24%程度と報告されています。TS-1や5’-DFURなどの薬剤との併用療法が試みられています。
日本では、第1選択のTS-1-based chemotherapy、第2選択のCPT-11 + CDDP療法についで、第3選択でtaxanesの単独投与が報告されています。

(2) CPT-11 (irinotecan)
単剤での効果は、16から23%程度と報告されています。TS-1との併用やCDDPとの併用が試みられています。

(3) CPT-11 + CDDP
海外では、CPT-11(65 mg/m2)とCDDP (30 mg/m2)を毎週投与し、4週連続投与したら2週間投与を休止するサイクルの治療を行い、38例の手術不能あるいは転移・再発胃癌の患者で、奏効率は58%、50%生存期間は9ヶ月と報告されています。
日本では、CPT-11 (80 mg/m2)を2週間に1回投与、CDDP (80 mg/m2)を4週間に1回投与する併用療法が行なわれ、奏効率は約50%と報告されました。
CPT-11 + CDDP併用療法は、TS-1-based chemotherapyが第1選択として行なわれた後の、第2選択として日本では広く行なわれています。

JCOG9912: Lancet Oncol 2009; 10: 1063
手術不能進行・再発胃癌を対象に、S-1単独治療と5-FU治療とCPT-11 + CDDP治療の3つの治療法を比較をする無作為化第III相比較臨床試験(JCOG 9912)が報告されました。5日間の持続静脈注入5-FU療法(800 mg/m2、day 1-5、4週間1サイクル)群が234例、S-1単独(80mg/m2/day, day 1-28、6週間1サイクル)群234例、CPT-11 + CDDP療法(CPT-11; 70mg/m2 on days 1 and 15, CDDP; 80mg/m2 on day 1、4週間1サイクル)群236例が登録されました。プライマリーエンドポイントは全生存期間でした。trailの目的は、CPT-11+CDDPの5-FUに対する優越性、S-1の5-FUに対する非劣性を証明することでした。
全生存期間の中央値は、5-FU群で10.8カ月、CPT-11+CDDP群で12.3カ月(HR=0.85, 95% CI 0.70-1.04, p=0.0552)、S-1単独群で11.4カ月(HR=0.83 , 95% CI 0.68-1.01, p=0.0005)でした。S-1が5-FUに対して非劣性(劣っていないこと)であることが証明されました。しかし、CPT-11+CDDPが5-FUと比較して優越性(勝っていること)は証明されませんでした。
治療に抵抗性を示すまでの期間(time to treatment failure: TTF)は、5-FU群で2.3カ月、CPT-11+CDDP群で3.7カ月(HR=0.85, p=0.0430)、S-1単独群で4.0カ月(HR=0.73, p=0.0004)でした。
無増悪生存期間の中央値は、5-FU群で2.9カ月、CPT-11+CDDP群で4.8カ月(HR=0.69, p<0.0001)、S-1単独群で4.2カ月(HR=0.77, p=0.0027)でした。
CPT-11+CDDPは初回治療では、5-FU単独治療に対して、優越性が証明できず、生存期間の有意な延長は認められませんでした。しかし、奏効率は38%認められたことから、標的病変を有する症例やbulky mass(大きな腫瘍)を形成する転移巣に対しては、CPT-11 + CDDP治療は初回治療として考慮してもいいと考えられます。また、diffuse type(低分化腺がんや未分化型腺がん)では、CPT-11+CDDPの治療成績が良好な傾向が認められました。

TS-1ベースの初回治療が無効となった際の2次治療としての、CPT-11 + CDDP治療の優越性を示す臨床試験の結果がまたれます。

(4) FOLFIRI: V306試験

手術不能進行・再発胃がんにたいして、CDDP+FU(CF)療法とFOLFIRI療法を比較する第III相無作為化比較臨床試験が報告されました。FOLFIRI療法群(170例)、CF療法群163例で、無増悪期間は5.0ヶ月と4.2ヶ月、奏効率は31.8%と25.8%、生存期間の中央値は9.0ヶ月と8.7ヶ月となり、FOLFIRI療法がCF療法に対して非劣性(同等であること)が証明されました。
EUでは、FOLFIRI療法が好んで使われるようになってきています。


(5) 5’-DFUR + weekly paclitaxel
TS-1抵抗性の進行再発胃癌に対して、5’-DFUR 600 mg/body/dayで3週間連続投与1週間休止、paclitaxel 70 mg/m2をday 7, 14, 21に投与する併用療法が施行され、2nd line治療として、奏効率は24%と報告されています。
別の報告では、TS-1抵抗性の進行・再発胃癌を対象に、5’-DFUR 600 mg/m2を2週間連続で服用、pacliaxelを80 mg/m2でday 1, 8に投与する併用療法で、奏効率は18.2%、無増悪生存期間(PFS)は119日、生存期間の中央値(MST)は321日でした。

(6) 5’-DFUR + docetaxel
Paclitaxelと同様な成績が報告されています。無作為化比較臨床試験がなされていません。



2-3 腹膜播種性転移

POINT
●腹腔内に留置カテーテルを挿入して薬剤を注入する方法があります。
●温熱療法あるいは温熱化学療法が考慮されます。
●taxane系薬剤が考慮されます。

腹腔内に留置カテーテルを挿入し、繰り返し化学療法を行うことが以前より行われています。明確なエビデンスはありませんが、オプションの治療として考慮されます。近年はtaxane系薬剤が投与されています。

(1) Taxane系薬剤: ASCO 2009 abstract # 4542
腹膜播種性転移を認める手術不能進行胃がん患者を対象にして第2相臨床試験が行われました。S-1 80 mg/m2を2週間投与、paclitaxel (PTX)を20mg/m2にてday 1と8に腹腔内注入、同日にPTX 50 mg/m2を静脈内投与する方法が行われました。40例の患者が登録され、組織学的にdiffuse typeが70%、intestinal typeが30%でした。1年生存率は78%、2年生存率は46%、全生存期間の中央値は22.5か月と報告されました。

(2)JCOG0407試験:ASCO2010 #4052

1次治療で5−FU系ベースの化学療法が施行され、抵抗性を示した手術不能進行胃がん腹膜転移例を対象として、2次治療で5−FU 療法とWeekly Paclitaxel療法を比較する無作為化第II相臨床試験が行われました。主要評価項目は、全生存期間でした。

5−FU療法(A群)は、持続静注療法:5−FU 800mg/m2/day day 1-5 every 4 weekまたは、5−FU /MTX時間差療法が施行されました。一方Weekly Paclitaxel療法(B群)は、Paclitaxel 80mg/m2/day day 1, 8, 15 every 4 weekでした。

A群は49例、B群51例が登録され、前治療でS-1が投与されていた症例は、それぞれ33例と32例、未分化型腺癌が44例と44例、腹水を有する症例は、40例と44例でした。

全生存期間の中央値は、A群で7.7ヶ月、B群で7.7ヶ月(HR= 0.887)、無増悪生存期間の中央値は、A群で2.4ヶ月、B群で3.7ヶ月(HR= 0.568、p=0.004)でした。3次治療以降で、A群の67.3%がWeekly Paclitaxelを施行されていました。

以上から、1次治療で5−FU系薬剤を投与されて抵抗性を示した胃がん腹膜転移例では、2次治療でWeekly Paclitaxelが有望な治療である可能性がわかりました。


3 2次治療以降

POINT

 1次治療に抵抗性を示した後、有効性が証明された2次治療は今のところありません。

 1次治療で5−FU系薬剤の投与特にS-1、S-1+CDDP療法が行われた後の、2次治療では、S-1、Paclitaxel、CPT-11などの薬剤が使用される。

 1次治療でS-1を投与した場合、2次治療以降でもS-1を使用するべきかどうか(5−FU Beyond Progression)については議論があります。

 2次治療を行うことで、BSCと比較して有意に生存期間が延長することが報告されています

(1)JCOG0407試験:ASCO2010 #4052

1次治療で5−FU系ベースの化学療法が施行され、抵抗性を示した手術不能進行胃がん腹膜転移例を対象として、2次治療で5−FU 療法とWeekly Paclitaxel療法を比較する無作為化第II相臨床試験が行われました。主要評価項目は、全生存期間でした。

5−FU療法(A群)は、持続静注療法:5−FU 800mg/m2/day day 1-5 every 4 weekまたは、5−FU /MTX時間差療法が施行されました。一方Weekly Paclitaxel療法(B群)は、Paclitaxel 80mg/m2/day day 1, 8, 15 every 4 weekでした。

A群は49例、B群51例が登録され、前治療でS-1が投与されていた症例は、それぞれ33例と32例、未分化型腺癌が44例と44例、腹水を有する症例は、40例と44例でした。

全生存期間の中央値は、A群で7.7ヶ月、B群で7.7ヶ月(HR= 0.887)、無増悪生存期間の中央値は、A群で2.4ヶ月、B群で3.7ヶ月(HR= 0.568、p=0.004)でした。3次治療以降で、A群の67.3%がWeekly Paclitaxelを施行されていました。

以上から、1次治療で5−FU系薬剤を投与されて抵抗性を示した胃がん腹膜転移例では、2次治療でWeekly Paclitaxelが有望な治療である可能性がわかりました。

(2) 2nd line+BSC vs BSC:ASCO2011

1次治療でFU製剤およびプラチナ系薬剤を含むレジメを受けた進行胃がんを対象に、2次治療を行うか、BSCを行い、2次治療の有用性を検討する第III相臨床試験が行われました。

進行胃がんで、初回治療でFU製剤およびプラチナ系製剤を含むレジメを受けた後、化学療法群あるいはBSC群に振り分けられました。主要評価項目は、全生存期間でした。

2次化学療法群は128例、BSC群は65例が登録され、化学療法の内訳は、CPT-11が62例、Docetaxelが66例でした。

全生存期間は、2次化学療法群が5.1ヶ月、BSC群が3.8ヶ月となり、有意に化学療法群で延長しました(p=0.009)。

この臨床試験からは、2次化学療法を施行することで、BSCと比較して有意に全生存期間が延長することがわかりました。

4 手術前・術後化学療法(Perioperative Chemotherapy)

(1) FENCLCC and FFCD Phase III trial, JCO 29:1715

病理学的に腺癌と確認された、手術可能な下部食道がん、胃・食道接合部がん、噴門部がんを対象に臨床試験がおこなわれました。目的は、手術前・術後化学療法を施行することで、手術単独より全生存期間が延長するかどうかを検討することでした。
化学療法は、
術前にCisplatin 100 mg/m2 day 1, FU 800 mg/m2 for 5 days(28日毎)
2−3サイクル施行し、術後、同様のレジメを3-4サイクル施行する治療でした。

主要評価項目は、全生存期間でした。

224例の患者が登録され、術前・術後化学療法群(C+S群)113例、手術単独群111例に振り分けられました。C+S群は、113例が術前化学療法を施行され、実際に手術を受けた症例は109例で、術後化学療法を受けた症例は、54例でした。S群は111例が登録され、実際に手術を受けた症例は110例でした。

噴門部胃がんは、両群とも全体の約25%で、接合部がんが62-67%、食道がんが9-13%でした。C+S群では、113例中54例のみが術後化学療法を施行されました。

約5.7年の観察期間での解析では、5年生存率はC+S群は38%、S群は24%となり、C+S群で有意に生存期間が延長しました(HR=0.69、p=0.02)。5年無病生存率は、C+S群で34%、S群で19%となり、C+S群で有意に無病生存期間が延長しました(HR= 0.65、p=0.003)。

多変量解析では、生存期間に有意に影響を与える因子は、術前・術後化学療法、噴門部胃がんでした。また、術前化学療法はR0切除率を向上しました。

上記のことから、病理学的に腺癌と確認された、下部食道がん、接合部がん、噴門部胃がんでは、術前・術後化学療法が、全生存期間、無病生存期間、そしてR0切除率を向上することが示されました。

(3) Magic trial (ASCO 2005 abstract #4001)

切除可能なstage II以上の胃がんあるいは下部1/3の食道腺がんを対象にして、手術単独群(S群)と術前化学療法を試行後、手術を施行し、術後に再度化学療法を行う群(S+C群)で、成績を比較検討する臨床試験が行われました。化学療法はヨーロッパで標準的に施行されているECF療法(epirubicin: 50mg/m2 IV bolus day 1, cisplatin: 60 mg/m2 4-hr infusion day 1, 5-FU: 200 mg/m2/day continuous infusion day 1-21, q3W)で、術前に3サイクル、術後に3サイクル行うプロトコールでした。主要評価項目は生存期間、副次評価項目は無再発生存、治癒切除率などでした。503例が登録され、S+C群250例、S群253例に振り分けられました。胃がんは全体の70%強でした。S群は253例のうち240例に手術が施行され、S+C群では250例中237例が術前に化学療法を施行され、215例(86%)が3サイクルの化学療法を終了しました。250例中219例に手術が施行されました。219例中137例(55%)のみが術後に化学療法を試行され、104例(42%)が3サイクルの化学療法を終了しました。S+C群のプロトコール完遂率はわずか42%でした。
全生存期間の中央値は、S群で20か月、S+C群で24か月となり、S+C群で有意に生存期間が延長していました(HR=0.75, p=0.009)。5年生存率はS群で23%、S+C群で36%でした。
術前・術後に化学療法を行うことで手術単独と比較して生存期間の改善が得られる報告ですが、化学療法のプロトコール完遂率が低いこと、手術後の合併症や死亡率が高いことから手術の質が担保されていないこと、5年生存率が日本と比較してあまりに低いことなど、単純に日本が参考にできる報告ではありません。
日本で主流のTS-1を基本としたプロトコールで、術前・術後化学療法の評価をする必要があります。術後化学療法は、補助療法の項を参照。





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胃癌治癒切除後の補助化学療法
治癒切除後の補助化学療法

新板橋クリニック

治癒切除後の補助化学療法
Version 2012.01

POINT
Stage II, Stage IIIA, Stage IIIBの場合、術後の再発予防として補助化学療法が推奨されます。

TS-1
UFT
Capecitabine

1. TS-1

Stage II/stage III胃癌では、手術単独治療と比較して、手術後にTS-1を1年間服用することで、死亡リスクが32%減少させることが、ACTS-GCで確認されました。

ATCS-GC studyでは、治癒切除を受けたstage II/stage III胃癌を対象に、TS-1を術後に投与することで、手術単独よりどの程度再発死亡が減少するかが検討されました。stage II, IIIで胃がん手術を受けた1059人の患者を対象に臨床試験が行なわれ、手術のみの群(530例)と手術後TS-1を1年間服用(80-120 mg/日を4週間投与、2週間休薬を繰り返す)する群(529例)に無作為に割り付け、全生存期間などが比較検討されました(ITT)。登録終了後1年経過後の中間解析では、TS-1群では、手術単独群と比較して、死亡リスクが32%減少することが明らかになりました。中間解析時の、手術後3年の全生存率は手術単独群で70.1%、TS-1投与群で80.1%でした(HR= 0.68 ,p=0.0024)。手術後3年の無再発生存率は、手術単独群で59.6%、TS-1投与群で72.2%でした(再発リスクを38%減少、HR= 0.62)。

JCO29:4387で報告された結果では、手術単独群とTS-1群を比較すると、手術後5年無再発生存率は、それぞれ53.1%と65.4%でした(再発リスクを35%低下、HR= 0.653)。手術後5年の全生存率はそれぞれ61.1%と71.7%でした(死亡リスクを33%低下、HR= 0.669)。

サブセット解析では、stage IIでは、手術後3年の全生存率は、手術単独群で82.1%、TS-1投与群で90.7%(死亡リスクを41%減少)でした。そして、手術後5年の全生存率は、手術単独群で71.3%、TS-1投与群で84.2%(死亡リスクを49%減少、HR=0.509 )でした。手術後5年の無再発生存率は、手術単独群で64.4%、TS-1投与群で79.2%(再発リスクを48%減少、HR=0.521)でした。

Stage IIIAでは、手術後3年の全生存率は、手術単独群で62%、TS-1投与群で77.4%(死亡リスクを34%減少)、手術後5年の全生存率は、手術単独群で57.3%、TS-1投与群で67.1%(死亡リスクを29%減少、HR=0.708)でした。そして、手術後5年の無再発生存率は、手術単独群で50.0%、TS-1投与群で61.4%(再発リスクを30%減少、HR=0.696)でした。

stage IIIBでは、手術後3年の全生存率は、手術単独群で62%、TS-1投与群で77.4%(死亡リスクを34%減少)、手術後5年の全生存率は、手術単独群で44.1%、TS-1投与群で50.2%(死亡リスクを21%減少、HR=0.791)でした。そして、手術後5年の無再発生存率は、手術単独群で34.4%、TS-1投与群で37.6%(再発リスクを21%減少、HR=0.788)でした。

Stage II/stage IIIAでは有意に死亡リスクが減少しましたが、stage IIIBでは有意な差が認められませんでした。

別のサブセット解析では、TS-1の服薬コンプライアンスと投与期間別の生存期間が検討されました。服薬コンプライアンス別の解析では、計画投与量(TS-1 80-120 mg/m2, 4週間投与2週間off)と比較して、70%未満の投与量になった群(64例)では、累積生存率が70%以上の群よりおとる傾向にありました。一方、投与期間別の解析では、TS-1を12か月服用できた群では、12か月未満しか服用できなかった群と比較して累積全生存率が良好な傾向にありました。12か月しっかり服用できた群での、計画投与量と実投与量の比率の内訳が不明であり、解釈が難しい内容です。サブセット解析から推測されるのは、副作用で服薬が中途でストップして12か月未満にならないよう注意すること、そのためには副作用のモニターをしっかりおこない、食欲不振や水様性下痢などが悪化した時点で4週間服用にこだわらず中途で休薬すること、副作用が出現しないぎりぎりの投与量や投与期間でコースを設定し、休薬期間をしっかりとって続けること、1コース目や2コース目は、副作用に注意して服薬できる期間や休薬が必要な期間を見定める期間にすることなどです。

ACTS-GCでは、臨床試験であるため残念なことにS-1の1年治療継続率が65.8%であり、副作用のため、TS-1を服用した患者の3分の1が途中で服薬を中止していました。臨床現場でも、治癒切除後の患者に、再発患者と同量の80-120 mg/bodyが4週間投与され、中途で副作用(食欲不振、水様性下痢、脱水など)が出現し投与継続が困難になる症例が多く見られます。繰り返しになりますが、臨床現場での対応は、臨床試験の投与量を杓子定規に投与することではなく、また4週間投与2週間offにこだわることではなく、有効性が示唆されているTS-1をいかに副作用が許容される範囲で、再発予防のために服用してもらうかという点になるでしょう。

2. UFT

pT2, pN1-N2でD2手術により治癒切除(根治度AあるいはB)が得られた進行胃癌を対象に、手術後の再発予防として、1日UFT 360 mg/m2を16ヶ月間服用することで、生存期間と無再発生存期間が手術単独群より改善するかどうかが検討されました(N-SAS-GC)。症例登録が遅延したため、UFT群190例、手術単独群190例で登録が終了されました。適格症例のUFT群93例、手術単独群95例が検討され、最終解析では、手術後UFTを16ヶ月服用すると5年生存率は86.%、手術単独では5年生存率は73.%となり、手術後にUFTを服用することで死亡リスクが52%低下することがわかりました(p=0.0166)。5年無再発生存率は、UFT群で85%、手術単独群は68%で、再発リスクは56%減少しました。

漿膜浸潤陰性のpN1あるいはpN2のstage II/IIIAの進行胃癌の治癒切除後の再発予防治療として、許容される治療と考えられます。

注意が必要なのは、今まで通常、臨床現場で投与されていたUFTの投与量よりも多い量となっていることです。N-SAS-GCでは、UFTは1日360 mg/m2が投与されており、1年治療継続率は60%以下となっています。副作用のため、患者の3分の1以上が服用を中断していることになります。臨床現場での対応は、臨床試験の投与量を杓子定規に投与することではなく、有効性が示唆されているUFTをいかに副作用が許容される範囲で、再発予防のために服用してもらうかという点になるでしょう。

3. XELOX:CLASSIC試験

stage II/III胃がんに対して、D2郭清後の術後補助化学療法として、XELOX療法を6ヶ月試行することの有用性を検討した、第III相臨床試験が行われています。

化学療法や放射線治療が未治療なstage II(T2N1,T1N2,T3N0), stage IIIA(T3N1,T2N2,T4N0)、stage IIIB(T3N2)の胃がん治癒切除後(D2郭清)の症例が、XELOX群あるいは経過観察群に無作為に割り付けられました。主要評価項目は3年無病生存期間、副次的評価項目は、全生存期間などでした。

韓国、台湾、中国から、XELOX群520例、手術単独群515例が登録され、stage II、stage IIIA、stage IIIB(T3N2)の内訳は、XEOLOX群で49/37/14%、手術単独群で51/36/13%でした。

中間解析では、3年無病生存率は、XELOX群で74%、手術単独群で60%となり、XELOX群で有意に改善しました(HR= 0.56、p<0.0001)。サブグループ解析では、ハザード比は、stage II、stage IIIA、stage IIIBで、0.55/0.56/0.57となり、いずれのステージでもXELOX群が良好でした。
中間解析であり、最終解析をまつ必要がありますが、stage II/III胃がんに対するD2郭清後の術後補助化学療法として、XELOX群は手術単独群と比較して、有意に無病生存期間を改善することが示されました。

3. 放射線化学療法
INT-0116試験(SWOG 9008)では、切除されたstage IB-IV胃がんを対象にして、術後に補助治療を行わない群(S群)と補助化学放射線療法を行う群(S+CXRT群)を比較する無作為化第III相臨床試験が行われました。603例が登録され、582例が2群に振り分けられS群277例、S+CXRT群282例が解析されました。化学放射線療法は、XRTは45Gy、5-FU/LV療法が施行されました。全生存期間の中央値は、S群で27か月、S+CXRT群で35か月となり有意にS+CXRT群で生存期間が延長していました(p=0.0051)。無病生存期間の中央値は、S群で19か月、S+CXRT群で27か月となり有意にS+CXRT群で延長していました(p<0.0001)。サブセット解析では、D0手術、intestinal type、男性で補助化学放射線療法を行うことで、有意に生存期間が延長していました。
日本とアメリカでは手術の質が違うこと、術後の成績がアメリカと日本では大きく異なることなどが背景にあり、この成績をそのまま受け取ることは難しいと考えられます。また、D0手術例で補助化学放射線療法が有効であるのは、日本で標準のD2手術を行えば切除されているはずの原発巣周囲の遺残がんに対して効果を発揮しているからであると解釈されます。
したがって、D2手術を標準術式としている日本では、化学放射線療法を行う意義はないであろうと考えられています。


4. 術前・術後化学療法

(1)Magic trial (ASCO 2005 abstract #4001)
切除可能なstage II以上の胃がんあるいは下部1/3の食道腺がんを対象にして、手術単独群(S群)と術前化学療法を試行後、手術を施行し、術後に再度化学療法を行う群(S+C群)で、成績を比較検討する臨床試験が行われました。化学療法はヨーロッパで標準的に施行されているECF療法(epirubicin: 50mg/m2 IV bolus day 1, cisplatin: 60 mg/m2 4-hr infusion day 1, 5-FU: 200 mg/m2/day continuous infusion day 1-21, q3W)で、術前に3サイクル、術後に3サイクル行うプロトコールでした。主要評価項目は生存期間、副次評価項目は無再発生存、治癒切除率などでした。503例が登録され、S+C群250例、S群253例に振り分けられました。胃がんは全体の70%強でした。S群は253例のうち240例に手術が施行され、S+C群では250例中237例が術前に化学療法を施行され、215例(86%)が3サイクルの化学療法を終了しました。250例中219例に手術が施行されました。219例中137例(55%)のみが術後に化学療法を試行され、104例(42%)が3サイクルの化学療法を終了しました。S+C群のプロトコール完遂率はわずか42%でした。
全生存期間の中央値は、S群で20か月、S+C群で24か月となり、S+C群で有意に生存期間が延長していました(HR=0.75, p=0.009)。5年生存率はS群で23%、S+C群で36%でした。
術前・術後に化学療法を行うことで手術単独と比較して生存期間の改善が得られる報告ですが、化学療法のプロトコール完遂率が低いこと、手術後の合併症や死亡率が高いことから手術の質が担保されていないこと、5年生存率が日本と比較してあまりに低いことなど、単純に日本が参考にできる報告ではありません。
日本で主流のTS-1を基本としたプロトコールで、術前・術後化学療法の評価をする必要があります。術後化学療法は、ACTS-GCの結果を参照。

(2) FENCLCC and FFCD Phase III trial, JCO 29:1715

病理学的に腺癌と確認された、手術可能な下部食道がん、胃・食道接合部がん、噴門部がんを対象に臨床試験がおこなわれました。目的は、手術前・術後化学療法を施行することで、手術単独より全生存期間が延長するかどうかを検討することでした。
化学療法は、
術前にCisplatin 100 mg/m2 day 1, FU 800 mg/m2 for 5 days(28日毎)
2−3サイクル施行し、術後、同様のレジメを3-4サイクル施行する治療でした。

主要評価項目は、全生存期間でした。

224例の患者が登録され、術前・術後化学療法群(C+S群)113例、手術単独群111例に振り分けられました。C+S群は、113例が術前化学療法を施行され、実際に手術を受けた症例は109例で、術後化学療法を受けた症例は、54例でした。S群は111例が登録され、実際に手術を受けた症例は110例でした。

噴門部胃がんは、両群とも全体の約25%で、接合部がんが62-67%、食道がんが9-13%でした。C+S群では、113例中54例のみが術後化学療法を施行されました。

約5.7年の観察期間での解析では、5年生存率はC+S群は38%、S群は24%となり、C+S群で有意に生存期間が延長しました(HR=0.69、p=0.02)。5年無病生存率は、C+S群で34%、S群で19%となり、C+S群で有意に無病生存期間が延長しました(HR= 0.65、p=0.003)。

多変量解析では、生存期間に有意に影響を与える因子は、術前・術後化学療法、噴門部胃がんでした。また、術前化学療法はR0切除率を向上しました。

上記のことから、病理学的に腺癌と確認された、下部食道がん、接合部がん、噴門部胃がんでは、術前・術後化学療法が、全生存期間、無病生存期間、そしてR0切除率を向上することが示されました。



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消化管間葉系腫瘍(GIST)について
新板橋クリニック 

Version 2012.01


概説
POINT

●KIT陽性(CD117)である
●c-kit遺伝子の突然変異によっておこる
●一部のGISTはKIT陰性、CD34陽性である
●完全切除可能な場合は手術を行う
●分子標的治療薬が有効である

消化管間葉系腫瘍は、消化管悪性腫瘍の1%程度を占めると推測されます。消化間葉系腫瘍は2つに分類され、①KIT(CD117)陽性となるGISTと②KIT陰性となる平滑筋由来あるいは神経源性由来の腫瘍に分けられています。

GISTは消化管間葉系腫瘍の大部分を占める1つの腫瘍単位とみなされるようになりました。GISTは、消化管の壁にできる腫瘍で、胃が60-70%と最も多く、小腸が20-30%で、残りは食道や大腸などに発生します。

消化管の壁には筋肉の層があり、それが伸びたり縮んだりします。この筋肉の運動に号令をかける細胞があり「カハールの介在細胞」と呼ばれています。GISTは「カハールの介在細胞」由来の腫瘍であると考えられています。

GISTはKIT(c-kit遺伝子産物)やCD34を発現し純粋な平滑筋(肉)腫や神経鞘腫とは表現型が異なります。約80から90%のGISTではc-kit遺伝子変異が認められ、c-kit遺伝子に変異がなくPDGFRアルファ変異がある場合が7%程度認められます。

GISTは原発巣あるいは転移巣が完全切除可能であれば、有効な治療は外科手術です。またKITやPDGFRを阻害するチロシンキナーゼ阻害剤が開発され、良好な成績を収めています。


診断
POINT
●超音波検査(US)
●造影CT検査
●上部内視鏡検査
●超音波内視鏡検査(EUS)
●超音波内視鏡検査ガイド穿刺吸引細胞診(FNS)
●組織診断でGISTであることを確認する

解説
GISTは、多くの場合、消化管粘膜下腫瘍として内視鏡や消化管造影検査で発見されます。そのうち、腫瘍径の大きい場合に手術を実施し、切除した組織を検査した結果、GISTであることが判明します。また、手術が困難な場合などは、先に腫瘍組織を採取して検査を実施します。4~5cmを超えるGISTでは、周囲の臓器などへの進展を正確に診断するためにはCT(またはMRI)を施行します。

診断手順


組織診断でGISTであることを確認することが重要です。GISTの腫瘍細胞は、約80から90%でGISTにKIT蛋白を発現しています。そのため、腫瘍組織を「免疫染色」という方法によって染めて、KIT蛋白が発現しているかどうかを確認することが重要なポイントになります。また、そのほかにもさまざまなマーカーの検査(CD34、デスミン、s-100タンパクなど)を行い、最終的にGISTかどうかを判定します。

KITたんぱくの発言検査


KIT蛋白とは?
POINT
●KIT蛋白は細胞の増殖に必要な信号を伝達する
●GISTでは遺伝子に変異がおこり「異常なKIT蛋白」が腫瘍細胞に発現する
●異常なKIT蛋白は、細胞増殖に必要な信号を常に伝達し、細胞の異常な増殖がおこる

解説
GISTでは、腫瘍細胞の細胞膜にあるKIT(キット)とよばれる蛋白の異常が原因であることがわかってきました。KIT蛋白は細胞増殖のシグナルを伝達しますが、このKIT蛋白に異常が起こると、増殖のスイッチが常に“オン”になり、細胞の異常な増殖が起こります。
GISTの約80から90%でKIT蛋白の発現が見られますが、そのほか、PDGFRα(アルファ) 蛋白の変異が原因となる場合も数%にみられます。

外科切除

POINT

●外科切除が最優先されます。
●外科切除は根治を期待できる治療法です。
●原発巣(胃)は、切除が可能であれば、外科切除が推奨されます。
●5cmを超える腫瘍は手術で切除が必要です
●2cm以下の腫瘍では経過観察します。
●同時性転移ともなう場合は、転移巣も切除可能であれば、外科切除が推奨されます。
●完全切除不可能例ではまずgleevecを投与し、切除可能になった場合は切除が推奨される。


解説
初発の場合(転移のない原発巣)の第一選択は外科手術による切除です。実際には、内視鏡検査や消化管造影でGISTを疑う粘膜下腫瘍が発見された場合、腫瘍の大きさやリスクなどによって経過観察をするか、手術をするかが判断されます。リスク評価は、腫瘍の大きさと細胞分裂している腫瘍細胞数で行います。
腫瘍の大きさが2cm以下で、腫瘍径の増大がない場合は、経過観察(年2回)を行ってもよいと考えられます。
2~5cmの場合は、切除範囲が少なく、手術による臓器機能喪失が抑えられる場合には手術が勧められます。特に、分裂している腫瘍細胞数が多い場合は悪性度が高いので手術が薦められます。
5cm以上の場合はリスクが高いと判断されますので、原則として手術が推奨されます。
転移を伴う場合は、原発巣と転移巣が切除可能であるかどうかで手術方法を決定します。転移巣がある場合は、完全切除例でも術後補助治療が推奨されます。

局所進行GISTで他臓器浸潤などがあり、完全切除が不可能あるいは他臓器の摘出量が大量になってしまう場合は、まずgleevecで先行治療(neoadjuvant therapy)を行い、局所腫瘍が縮小したところで、完全切除を行うこことが推奨されます。完全切除率の増加と臓器温存が可能になるからです。


手術後の経過観察
POINT
●完全切除例でも、リスクの高い例では、術後補助治療が推奨される
●転移や浸潤を伴うGISTは完全切除も術後補助療法が推奨される
●不完全切除例では、分子標的治療薬の投与が必要である

解説
外科手術によって、完全切除が得られれば、その後は経過観察を行います。しかし、リスクが高い場合(腫瘍径が5cm以上、腫瘍細胞の分裂数が多い)や周囲臓器浸潤、破裂例、転移を伴う例では、術後にGleevec(グリベック)による補助治療が推奨されます(GISTの薬物療法を参照)。
経過観察を続ける期間としては、およそ10年間は継続し、腫瘍が再発していないか、肝臓や腹膜などへの転移がないかを確認します。経過観察では、CTなどによる検査を3か月に1回行う場合が一般的です。

腫瘍の大きさ

転移巣あるいは再発巣の外科切除

POINT
●完全切除可能であれば、まず外科切除が推奨されます。
●転移・再発巣を完全切除することが、根治を期待する治療法です。また、完全切除例は、切除を行わなかった例より生存期間が延長します。
●完全切除不可能例ではまずgleevecを投与し、切除可能になった場合は切除が推奨される。
●gleevec治療後一部耐性を示した局所性イマチニブ(IM)耐性では、耐性を示した腫瘍巣が完全切除可能であれば外科切除し、gleevec治療を継続します。

解説
転移巣あるいは再発巣が比較的少数で、完全切除が可能な場合は、外科切除が推奨されます。
全身性に転移・再発したGISTでは、まずgleevecの投与が推奨されます(前述)。80%以上の効果(SD+PR)が認められますが、いずれ後期耐性(secondary resistance)を生じてきます。後期耐性の場合、一部の転移・再発巣のみが耐性を示す場合は局所性イマチニブ(IM)耐性と呼び、耐性を示した腫瘍巣のみ完全切除を行うことが推奨されます。大まかな目安として3個以内、5 cm以下とされていますが、技術的に完全切除が可能であれば、その限りではありません。耐性を示した腫瘍巣を切除後は、その他の転移巣に対しては、gleevec投与を継続します。多くの部位で耐性が生じた場合は全身性IM耐性と呼び、gleevecの増量あるいはSUTENTへの変更が推奨されます。

詳細は
新板橋クリニック


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「安心」できるがん治療医師とは
新板橋クリニック腫瘍センター

「安心できる」がん治療専門医とは

Version 2012.01

 「安心できる」がん治療のために

「安心して」治療を受けるために大事なことは、医師、看護師、薬剤師、そして、病院という医療チームとの関係性です。特に普段診療にあたる医師との関係は重要です。自分という「存在」は、医師によって、そして周囲の人たちによって支えられていると思える「関係性の力」が、安心できるがん治療にかかせません。

 「安心できる」がん治療専門医師とは

最新の知識をもって病気の診療にあたる医師であることは勿論です。そして、患者の身体と心の全体を診ることを意識し、「人の存在の援助」をおこなう医師のもとで、「安心して」がん治療を受けることができます。
あなたのがん治療専門医師が、「存在の援助」そして、「安心できる」がんの治療のために必要な条件をいくつ満たしているかをチェックしてみましょう。

 チェックリスト

①生活編
□ あなたがどのように生活しているかに興味をもってくれますか?
□ あなたの仕事がなにかをしっていますか?
□ あなたの起床時間や食事の時間、就寝時間をしっていますか?
□ あなたの食事内容や食欲に注意を払いますか?
□ あなたの副作用に注意を払いますか?
□ あなたの副作用を和らげるように注意を払いますか?
□ あなたが何をしたいかを質問してくれますか?
□ あなたが治療を受けていて何がつらいかを質問してくれますか?
□ あなたが家に閉じこもってしまわないように、外出していろんなことをしなさいといってくれますか?
□ がんのせいではなく、化学療法のせいで体が弱らないように気をつけてくれますか?
□ あなたの家族のことも気にしてくれますか?

②診察編
□ あなたの顔をみながら話をしてくれますか?
□ あなたの体を触診して、診てくれますか?
□ あなたが分かりやすいように紙にかいて説明をしてくれますか?
□ なにか他にご質問がありませんか?と必ず聞いてくれますか?

③アフターケア編
□ あなたの病気のことに、ひとごとでなく対応してくれますか?
□ あなたが緊急時に連絡がとれるように、電話番号を教えてくれていますか?

④治療編
□ 標準的な治療のみでなく、オプショナルな治療の提案もしてくれますか?
□ あなたに適した治療法(化学療法、放射線療法、外科手術など)を幅広く提案してくれますか?
□ がんのみでなく、あなたの体をきめこまかく診てくれますか?
□ がんに伴う症状を解決するための方法を知っていますか?
□ がん性疼痛治療の手順に熟知していますか?
□ がんの治療(化学療法など)はするけれども、血圧や糖尿などその他の病気など、あなたのからだのことに幅広く注意を払ってくれますか?

チェックリストの解説

① 生活編
がんの治療とはいっても、人間(身体と心)を診ることには変わりありません。治療をする患者の生活をよく知った上で治療を行っていく必要があります。患者の生活に興味をくれるがん治療専門医師でしょうか?生活に細やかな注意を払ってくれる医師かをチェックしてみます。

② 診察編
あなたの顔をみて話をしてくれるでしょうか?身体の中にあるがんを治療するのですから、身体を触らないで治療をすることはありえないはずです。触診をする医師のもとで、「安心して」がん治療を受けることができます。難しい話を聞かされても頭に一度にはいらないと思います。その都度紙に書いて説明をしてくれるかどうかは重要なポイントです。話しを聴いてくれる、そして質問できる医師のもとで、「安心して」がん治療を受けることができます。何か質問はないですか?と聞いてくれる医師でしょうか?

③ アフターケア編
がんの治療をしていると、副作用やがんの症状のため、緊急で連絡をとりたいときがあるものです。24時間、緊急で連絡がとれるように、「連絡先の相手」がはっきりしていると、「安心して」がん治療を受けることができます。

④ 治療編

がんの治療は日進月歩です。標準的治療は毎年どんどん更新されていきます。海外の動向にも詳しく、いろいろな治療プランを提案できる医師かをみてみましょう。患者の身体と心全体に気を配る医師かをチェックしましょう。がんの治療中にがん性疼痛などのいろいろな症状が出現してくることがあります。症状を緩和する方法、特にがん性疼痛治療に関心のあるがん治療専門医師でしょうか?症状緩和治療の方法に関心がある、そして習熟している医師のもとで、「安心して」がん治療を受けることができます。

腫瘍センター

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グリベックとスーテントが無効になった場合
グリベックとスーテントが無効になった場合

新板橋クリニック

グリベックとスーテントが無効になった場合
Version 2012.01

POINT
●exonのどの変異であるかを確認します
●KIT変異や他のマーカーの異常を確認します
●治療効果の再評価をします
●グリベックとスーテントの併用を検討します
●その他の薬剤を検討します
●局所性(IM)耐性あるいは局所性(SUTENT)耐性、あるいは局所性(IM+SUTENT)耐性であれば、耐性を示す腫瘍巣を外科切除することも推奨されます。


解説

3次治療を検討する際は、初回治療と2次治療での腫瘍の反応性をよく見直す必要があります。初回治療でグリベックを投与され、ある程度の期間治療効果が認められた後、後期耐性になった場合は、グリベックの増量が行われています。グリベックの増量にてそれぞれの腫瘍部位が反応(CTでは腫瘍が液状化したか?、縮小したか?PETでは集積が減弱したか?)しているかを見直します。
次にグリベック増量でも抵抗性になった場合、SUTENT(スーテント)の投与が行われています。スーテントの投与ですべての腫瘍部位が反応しているか?一部の部位のみ反応していたのかを見直します。

現在3次治療としては、3つの治療候補がある。
(1) Gleevecの再導入
(2) Gleevec + SUTENT併用療法
(3) その他の薬剤


GISTでは、治療を継続していると、転移・再発巣によって、exonの変異部位が異なり、薬剤への反応性が異なってきます。そのため、まずgleevecの投与で、すべての転移巣が制御されていても、しだいに、2次・3次変異が生じてきて、後期耐性をおこします。しかし、すべての転移・再発巣がgleevec耐性になるとは限らず、gleevecで制御されている部位とgleevecで制御されない部位が混在してきます。

2次治療でSUTENTが投与された場合も同様で、imatinib反応性の部位、SUTENT反応性の部位、imatinibに反応しないがSUTENTに反応する部位、imatinibに反応するがSUTENTに反応しない部位など、腫瘍はヘテロな細胞集団となります。

その場合は、グリベックとスーテントの併用で腫瘍の制御が可能になる場合があります。注意する点は、グリベックとスーテントの標準量の投与では副作用のコントロールが困難であるので、初回治療、2次治療時の副作用を確認し、注意深く投与量や投与期間などスケジュールを決定する必要があります。

グリベック単独で再導入する治療は、上記の理由で、imatinib反応性の部位には有効ですが、imatinib抵抗性の部位には効果がないため、gleevecとSUTENTの併用療法で副作用のコントロールができない症例でのみ検討することが薦められます。

局所性(IM)耐性あるいは局所性(SUTENT)耐性、あるいは局所性(IM+SUTENT)耐性であれば、耐性を示す腫瘍巣を外科切除することも推奨されます。


Gleevec(グリベック)とSUTENT(スーテント)の併用

POINT

●1次治療はgleevec
●後期耐性ではまずgleevecの増量
●gleevecの増量で制御できなければ、あるいは副作用で増量が不可能であれば、SUTENTへ変更
●SUTENTのみで制御できなければgleevecを併用する
●局所性耐性であれば、耐性を示す腫瘍巣を外科切除する

GISTでは、治療を継続していると、転移・再発巣によって、exonの変異部位が異なり、薬剤への反応性が異なってきます。そのため、まずgleevecの投与で、すべての転移巣が制御されていても、しだいに、2次・3次変異が生じてきて、後期耐性をおこします。しかし、すべての転移・再発巣がgleevec耐性になるとは限らず、gleevecで制御されている部位とgleevecで制御されない部位が混在してきます。その場合は、グリベックとスーテントの併用で腫瘍の制御が可能になる場合があります。注意する点は、グリベックとスーテントの標準量の投与では副作用のコントロールが困難であるので、初回治療、2次治療時の副作用を確認し、注意深く投与量や投与期間などスケジュールを決定する必要があります。
局所性(IM)耐性あるいは局所性(SUTENT)耐性、あるいは局所性(IM+SUTENT)耐性であれば、耐性を示す腫瘍巣を外科切除することも推奨されます。
全身性耐性の場合は、3次治療を検討します。

他の薬剤

POINT

●Sorafenib(Nexavar)
●Nirotinib
●Dasatinib
●Masitinib
●everolimus(RAD001)

解説
いくつかの薬剤がgleevec耐性かつSUTENT耐性GISTに対してphase II試験で効果が指摘されている。現在phase III試験が進行中の薬剤があるが、現状ではエビデンスが示された有効な薬剤はない。

(1) Sorafenib (Nexavar) 2011 ASCO #10009

2011 ASCOで、sorafenibの3次治療の結果が報告されました。1次治療としてimatinib(gleevec/glivec)が投与され耐性になった患者あるいは1次治療でimatinib、2次治療でSutentが投与され耐性になった患者を合わせて38例に、3次治療としてsorafenibが投与され効果が検討されました。

1次治療Imatinib(IM)の腫瘍コントロール率は80%以上、無増悪生存期間の中央値は20-24か月、2次治療SUTENT(SU)の腫瘍コントロール率は65%程度、無増悪生存期間の中央値は5.6か月程度です。

3次治療sorafenibは1回400mg経口、1日2回服用で、28日間連日服用で行われました。しかし、約59%の患者で副作用のため減量が行われました。38例中、CRは0%、PRは13%、SDは55%、腫瘍制御率は68%、PD7例32%でした。Exon 11及びexon 9変異の患者療法で腫瘍のコントロールが得られていました。無増悪生存期間の中央値は、IM耐性患者で3.4か月、IM/SU耐性患者で5.2か月でした。全生存期間の中央値は、IM耐性患者で13.6月、IM/SU耐性患者で10.5か月でした。3次治療としてsorafenibが有効な可能性があります。

(2) Nilotinib ASCO 2008 #10523
未成熟なデータですが、2008 ASCOで、nilotinibの3次治療の結果が報告されました。1次治療でimatinib、2次治療でSutentが投与され耐性になった患者42例に、3次治療としてnilotinibが投与され効果が検討されました。
1次治療Imatinib(IM)の腫瘍コントロール率は80%以上、無増悪生存期間の中央値は19-21か月、2次治療SUTENT(SU)の腫瘍コントロール率は7-9%程度、無増悪生存期間の中央値は8.2か月程度です。
Nilotinibは経口のTKIで、KIT, PDGFRα, BCR-ABLを抑制する薬です。
3次治療nilotinibは1回400mg経口、1日2回服用で投与されました。42例中、PRは4例、SDは15例で腫瘍制御率は45%でした。
症例数、観察期間ともに少なく未成熟なデータのため、治療効果について確実なことは言えませんが、3次治療としてnilotinibが有効な可能性があります。

(3) Imatinib + RAD001, ASCO 2008 # 10519
1次治療IM耐性となった患者あるいは1次治療IM耐性で2次治療にも耐性(70%以上はsutent耐性)になった患者に対して、imatinib+RAD001を併用して効果があるかが検討されました。
IM耐性患者28例に、2次治療としてImatinib+RAD001が投与されると、無増悪生存期間の中央値は1.9か月、6か月無増悪生存率は12.7%、SDは35.7%に認めました。
一方、IM耐性かつ2次治療でSUTENTを含む他のTKIを投与され耐性になった患者47例に、3次治療としてImatinib+RAD001が投与されると、無増悪生存期間の中央値は2.5か月、6か月無増悪生存率は20.1%、SDは42.6%に認めました。
症例数、観察期間ともに少なく未成熟なデータのため、治療効果について確実なことは言えませんが、2次治療あるいは3次治療としてimatinibにRAD001を併用することが有効な可能性があります。


(4) Regorafenib ASCO2011

1次治療IM耐性、そして2次治療SU耐性になった患者に対して、Regorafenibが効果があるかが検討されました。
IM/SU耐性患者33例に、3次治療としてRegorafenibが投与されると、6か月無増悪生存率は10.0%、4週間以上SDは64%、PRは9%に認めました。

(5) Dasatinib ASCO2011

1次治療IM耐性、そして2次治療SU耐性になった患者に対して、Dasatinibが効果があるかが検討されました。
IM/SU耐性患者50例に、3次治療としてDasatinibが投与されました。IM耐性が100%、そしてSU耐性が80%でした。Exon11変異は56%、Exon9変異は9%、野生型は31%でした。Choiの効果判定では、PR22%、SD24%、そして腫瘍制御率は46%でした。6ヶ月以上SDは20%、そして、6ヶ月無増悪生存率は20%でした。無増悪生存期間の中央値は1.8ヶ月、全生存期間の中央値は19ヶ月でした。




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