COX-2は炎症をひきおこす物質です。COX-2の産生が増加すると、アラキドン酸カスケードと呼ばれる炎症を引き起こす流れが誘導されます。COX-2はプロスタグランジン(PG)E2の産生を誘導し、PGE2は血管新生、細胞の遊走、細胞の浸潤、細胞の増殖を盛んにします。また、アポトーシスと呼ばれる細胞死を抑制します。
そのため、COX-2の産生を抑えることで、がん細胞を抑える効果が得られるのではないかと推測され、さまざまな実験が行われています。
実験では、COX-2の産生を抑えるCOX-2阻害剤で、特定のがん細胞の増殖が抑えられることが証明されています。また、動物実験では、肺がんのモデルで抗がん剤とCOX-2阻害剤を併用することで、抗がん剤単独よりもより効果的にがん細胞の増殖を抑制することが証明されています。
人では、COX-2阻害剤を服用することで、大腸線種の発生が抑制されることが証明されています。
以上のことから、がん治療においても、抗がん剤とCOX-2阻害剤を併用することで抗がん剤単独よりも高い抗がん効果がえられるのではないか?と推測されています。
現在のところ、COX-2阻害剤と抗がん剤を併用すると抗がん剤単独より効果が上乗せされることを証明した無作為化比較試験はありません。逆に最近になって、COX-2阻害剤の上乗せ効果を否定する論文がでました。 JCO 2006; 24:4825では、Lilenbaumらは非小細胞性肺がんの患者を無作為に化学療法単独群と化学療法にCOX-2阻害剤のcelecoxibを併用する治療群とに振り分けて治療効果を検討しました。Celecoxibは1日800 mgで連日投与されました。50%生存期間は化学療法単独群では8.99ヶ月、化学療法とCOX-2の併用治療群では6.31ヶ月、1年生存率は化学療法単独群で36%、併用群では24%でした。Celecoxibを化学療法と併用することでの上乗せ効果は証明されませんでした。
また、COX-2阻害剤の投与は心血管系障害のリスクを増加させることが報告されており、慎重な投与が必要です。
そのため、現状ではがん治療において、化学療法とCOX-2阻害剤の併用治療を積極的に推奨する根拠は認められません。
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